deceive



ヴィクトリアはこそこそと庭を歩き回っていた。
ブライアンに出くわすと口説かれるためそれに用心してだ。

「普通、なんで婚約者から逃げてるのもおかしいしんだろうし、変なんだろうな」

世間一般の目からしたら変極まりない。
それでもヴィクトリアは必死だ。

本来婚約者同士であれば仲睦まじく一緒に居るべきものなのだが、ヴィクトリアとブライアンはそんな仲ではない。

寧ろ、“犬猿の仲”? “ナメクジに塩”?(この場合、どちらがナメクジか考える必要はない)
という感じだ。
というか婚約というものは好いた者同士がお互い了承してなるものだ。
しかし今回では話が違う。

婚約発表会当日初めて会い、その時の自分の格好はボロボロ。
おまけに水に浸かっていた。

一目見て確実に姫と思えるような姿ではない。

そんな恥ずかしい格好をして出会ったというのに、ブライアンは自分を手放さない。

「そりゃぁ婚約者だからだろう、けど」

正直この国では婚約破棄も認められている。
お互いの意思がそうであるのならばその意思を尊重し、婚約破棄が認められる。

だが今回は事情が違う。
この国の王女の婚約で、しかも相手は破棄をしようと露にも思っていない。

「…あたし味方がいないわ」

そうもともとヴィクトリアは立場が弱いのだ。
女児であるし、別名“山猿”だ。

唯一の味方はこの国にいない姉だし。
親友はどちらかと言えばブライアン側だ。

王国の者がガサツで非常識極まりない。
そんなことからヴィクトリアは国で立場が弱い。


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