ここは王宮の図書室――増大な本が溢れかえる部屋だ。
国中で一番多いと言っても過言ではない。
「ていうか、」
自分の状況を改めて見て、ヴィクトリアは不満の声を上げた。
その声に律儀に反応するは婚約者のブライアン。
「なぁに、ヴィクトリア」
「“なぁに”じゃないわよ! この体勢は何!?」
「何って」
下を見て見れば、なぜかブライアンの脚がある。
こんな展開になったことを必死でヴィクトリアは思い返してみる。
『ヴィクトリア、これ見てよ』
『?』
手招きされ、そろそろと近づいていったヴィクトリアは急に腕を引っ張られ、なぜかブライアンの上に。
何が何だかわからない内に丸め込まれてそのまま早数分が過ぎていた。
「だ、か、ら! なんであたしはブライアンの脚の上に座ってるの!?」
「なに、いや?」
「いや!!」
何が悲しくて婚約者(認めていない)といっしょの本を婚約者の膝の上で読まなくちゃならんのだ。
まるでこれじゃぁ、
「まあいいじゃない」
「よくないぃ――!!」
確かに婚約はしたけれどお互い合意はしていない。
(合意していないのはヴィクトリアだけなのだけれど、、、)
なのにいきなりこんな体勢だなんて困る。
「別にいいじゃん。俺と君の仲なんだから」
「変な言い回しをするなぁぁ―――!!!」
そうヴィクトリアは絶叫し、その反応にブライアンはからからと笑っている。
ヴィクトリアはむっとした。
「別になんだっていいんだよ。俺がしたいからする。―――ただそれだけ」
何か文句を言ってやろうと開いた口をそのままヴィクトリアは閉じた。
確かにそうだ。
人には権利がある。
したいことをする権利が。
おいおいをいをい!
「って、話がちがぁう!」
「あははははは」
気づいたヴィクトリアの文句をブライアンは笑いで受け流す。
それが無性に腹が立つのだが、なぜか今回は赦してしまおうと思えた。
You needn't take it too seriously.
(そんなに難しく考えなくてもいい)
Easy Or Hard
(って、どこ触ってんのよ!)
(いいじゃん。婚約者同士のスキンシップ)
(やっぱり離せぇえ――!!)