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「困りものなのね。ヴィクトリアの婚約者は」

「そうなの! 逐一逐一嫌みったらしい!」

「でもお母様はお気に入りのようよ?」

ヴィクトリアはだいすきな母の様子を思い浮かべ肩を落とした。
キラキラだ。母はキラキラの目でブライアンを見る。

「…でも性格悪いわ」

「そこも個性よ」

「姉様……」

じーんと姉が居ることに感謝する。
そうヴィクトリアがさっきから話し込んでいる相手は姉のコルディだ。

少しだけ歳の離れた姉は既婚者で隣国に嫁いでいるのにもかかわらず、お悩みのヴィクトリアのために帰省してくれたのだ。

「それに話し合ってみなきゃわからないこともあるのよ」

「話し合ってみようと思っても、はぐらかされるわ」

機会がないわけじゃなかった。

ヴィクトリアだってばかではない。
相手のことを知ろうと思い話をした。

……がしかし。
そのたびに、はぐらかされるのだ。

「じゃぁ、まだ信用されてないのね」

「え………?」

つっ、と顔を上げてみるとコルディは上品にいっそのこと面倒なくらいマナーに気をつけてスコーンを食べている。
早く食べるよう催促し、意味を尋ねた。

「つまりは、まだあなたが信用できていないのよ」

確かにそう。
そうなのだが、取り付く島もなく断言されれば、ヴィクトリアの心臓は瀕死状態だ。

それじゃ話しようがない。
しゅんとヴィクトリアは俯いた。

ふぅー…とコルディは溜息を吐いた。

かわいい妹にそんな顔をさせている男にあまり妹を任せたくはない。

「これから知っていけばいいんじゃないかしら」

時間もたっぷりあることだし、そうコルディは付け足した。

「うん……、そうだね。ありがとう! 姉様、話してくれるまで待ってみる!」

元の笑顔に戻ったヴィクトリアにコルディは癒される。
かわいい妹に暗い表情は似合わない。

と、そこに。

「ヴィクトリアー!」

声がした。


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