keep a secret



ここは王室――つまり国王と王妃が住まう部屋である。
そんな部屋で二人は話し合っていた。


「ヴィクトリアは彼が嫌なようね」

「仕方あるまい」

初めて会った人物といきなり婚約しろ、と言われ認める者はなかなかそうはいない。

「あの子が嫌がるようなら違う男を用意しなくちゃね」

“用意”という言葉は引っかかったが仕方があるない。
王妃――ヴィクトリアの母は容姿はとても清楚で可憐だが、さすがはヴィクトリアの母。
気性は荒い。

子どもの頃はヴィクトリアと相違ないほどお転婆だったようだ。
これに手を焼いたのは国王。
そしてようやく子どもが出来て王妃は落ち着いた。

国王も二度も同じことを繰り返すとは思わなかっただろう。

だから国王はヴィクトリアに無理矢理婚約させたのだ。

「けどいい男ね。わたしがほしいくらい」

「………」

「冗談よあなた。浮気なんてしないわ」

どうやら、そう国王は心中呟いた。

「…とにかく。新しい男の用意はしておく」

「いい男がいいなぁ。義理の息子になるんだものっ」

娘以上に新しい婚約者に喜んでいるようだ。
国王は頭を抱えた。

こういうところは子を産んでも改善しなかったらしい。

「娘の婚約者を奪うなんぞしてはならんぞ」

「わかってるわよ!」

「………ほんとにわかっとるのか?」

王妃は完璧に聞こえていない。

「目当てはついとる」

「まあ。どんな人?」


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