「…っ!!」

ぶんっと反動をつけてヴィクリアはブライアンに殴りかかった。
しかし、小さな呻き声だけでひょいっと避けられてしまう。

「逃げんな!」

「だって当たると痛そうだし」

「一発殴らせろって!」

「やだ」

「〜〜〜〜〜っ!!!」

本っ気でムカつく!!

「お仕置きしてあげようか」

「へ? ぎゃッ」

そう呟かれ、耳に訪れた熱にヴィクトリアは思わず声を上げてしまった。

「へぇー、結構感じやすいんだ」

「ちょ! やぁー」

完璧に面白がられている。
そう感じ取ってヴィクトリアは口を押さえようと手を口に運んだが、その手をブライアンが剥ぎ取ってしまった。
やわらかく、耳たぶを咬まれる。

「やだあぁ…」

だんだんその熱に力が奪われていき、ブライアンが支えてくれなければ腰が砕けてしまいそう。

「とか言って“いや”じゃ無いくせに」

ついで生温かいものが耳の中に入り込んできた。
彼の舌ということはすぐにわかった。

ブライアンの首に必死にしがみ付く。

「俺は嫌いじゃないよ? 感じやすい子」

ぴちゃぴちゃと卑猥な音がその場に響き、ヴィクトリアの顔が尋常じゃないくらい熱くなる。

「………ッ」

ヴィクトリアは最後の力を振り絞り、脚を振り上げる。
(やっぱり身体は黙っていられなかったようだ)
それは易々と避けられてしまうのだが、それだけでヴィクトリアには十分だった。

「っ、」
「なにすんのよ馬鹿!」

そう捨て台詞を吐きヴィクトリアは駆け出した。

頬が。耳が。熱い。
熱を持っている。

ブライアンの熱が毒のようにじわじわと侵略してきている。


ドキドキしただんて、
そんな訳が無い。

胸が疼いたなんて、
絶対に気のせいだ―――。


-13-
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