ぽつりとヴィクトリアは呟いた。
ヴィクトリアの婚約者ブライアン・カトリスの性格のことだ。
プラチナブロンドの髪に宝石のアメジストに似た紫の瞳。
貴族らしい立ち居振る舞い。
洗練された言葉遣い。
ヴィクトリアとは雲泥の差だ。
どこをとっても見目はいいのだが、
問題は性格だ。
彼は簡単に言ってしまえば“ドS”。
人を手玉にとって簡単に掌で転がしてしまう。
ヴィクトリアにとって何かと癇に障る男なのだ。
(性格の面であればヴィクトリアの方がいいに違いない)
なのに父である国王は―――
『お前のことを娶ってくださるお方なのだ。そんなことを言うでないヴィクトリア』
元々ヴィクトリアに手を焼いていた国王にとって、まさに棚から牡丹餅。
地位や名声もあり、容姿もいいブライアンはちょうどいい相手なのだ。
ヴィクトリアの周りには同意してくれる仲間が少ない。
その苛立たせる男、ブライアンは何かと。
『俺たち親交を深めようよ』
だとか、
『お互いの事知るためにイイコトしようか』
とか言ってくる。
それを聞いた女中たちはキャーキャー言っている。
(ここから推察するにブライアンは見せつけているのだと思う)
確かに見目は認める。
だがあの性格は……
「何とかならないもんかなぁ」
「―――何が“何とかならないもんかなぁ”なの? 俺のお姫様」
耳元で甘ったるいあの男の声が聞こえた。(声までいいなんてエコ贔屓だ!)
その声にヴィクトリアが振り向く前にふわりと体が浮いた。
「ぎゃぁ!」
「色気のない声だね」
のんびりとした声で随分と酷いことを言う。
むっとしてヴィクトリアは暴れまわった。
さすが山猿。だがしかし、相手はあのブライアンだ。
国王や女中、ましてや王妃ではない。
「暴れると下着見えるよ」
「っっ!」
そう言われ慌ててヴィクトリアはスカートを押さえた。
羞恥で頬が赤くなる。
(いくら山猿だろうと恥ずかしいものは恥ずかしいのである)
そんなところから攻めるブライアンは絶対に加虐趣味に違いない。
「女の子なんだから」
羞恥以上に怒りで赤くなる。
もう黙ってられない!(身体が)
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