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ここ、カーミラ王国は人口百万人を誇る大帝国だ。
近隣の国より財があり、土地も豊かで何不自由ないのが売りの国である。

青年は誇り高き騎士道を胸に。
少女は騎士のために働き、帰りを待つ。

差別などがなく、本当にこの国は平和だ。

そんな王国の姫(“山猿”と呼ばれるお転婆姫)がつい先日婚約したのだ。
そのおかげか――はたまたせいか街は浮き足立っていた。

街一色お祭りムードだ。


「ねぇねぇおばちゃん。皆浮き足立ってるけど何かあったの?」

「ん? アンタ見かけない顔だねえ」

「最近この国に来た名もない一座の裏方をやってるのよ。
それで、このお祭りムード真っ盛りの雰囲気はどうしたの?」

「そうなのかい! アンタ達、運がいいよ! この間うちのお姫様が婚約なさって毎日がパーティなのさ!」

「へぇー…」

少女は話を聞かせてくれた女に会釈をし、裏街道を歩き始め、光も届かなくなったところで少女はしゃがみ込んだ。


「盛大に公表し過ぎだろ―――!!!!」


もう読者様はおわかりだろう。
このあまりにも貴族らしからぬ口ぶり。
貴族らしからぬ立ち居振る舞い。
そう、彼女はカーミラ王国第2王女ヴィクトリアだ。

ヴィクトリアは住まいである城にいると居心地が悪いため、お忍びで城下町に来たのだ。
(お忍びと言うなの脱走だ)

そもそも悪いのはあのブライアン・カトリス―――ヴィクトリアの婚約相手だ。
婚約なんぞをしてしまってから侍女たちには生暖かい目で見られ、大臣たちからは早くお子が生まれますように、などと毎日言われ…。

精神的に参るだろうあれは。
寧ろ、もうノイローゼになりそう。

まあ上記の理由からで街娘に扮装しヴィクトリアはプラプラと城下町を歩くことにしたのだ。
(そんな理由がなくてもよく脱走するが)

にしても……、

「あの性格は詐欺でしょ」


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