「なぁに、これ」


「ぺスカトーレとホワイト・ローズ」

赤いトマトベースのペスカトーレにはおいしそうな魚介類が。
こいつの冷蔵庫事情が知りたい。


「おいしそー……」


即座にフォークを手にとって、口に運ぶ。
冷め切ってからじゃぁまずくなってしまうから少し熱いくらいが調度いい。


………――。


「おいしかっただろ」


何も言わないのに、わかったかのような顔をしてSeven Starsを吹かしてサディスティックな笑顔を浮かべる。
(いや実際、おいしいんですケド、認めるのが癪な時ってあるじゃない)


「…ふんっ」


口惜しくて、口惜しくて、口を噤む。


突き刺さってくる視線を躱すためにホワイト・ローズに口をつける。
グラスに付く、シャネルのROUGE ALLURE LAQUE。それをいつも通り、親指で拭い取った。


相変わらず、美味し過ぎるカクテル。
品の良いBGMに。カウンターの隅に置かれた薔薇(今日のはイプノーズ)


「あんた、ある意味最強だわ」


降参したように呟くと、アタリマエだろってニヒルな笑い。
色々言ってやりたいところもあったけれど。
まずは自分に言ってやりたいことが山ほどある。


「……ばぁか」


本当の馬鹿はどっちだ。
そして、あたしの明日はどっちだ。


―――それが、去年のあたし達。




-4-
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