千歳はあの、真正のサディストな笑みを浮かべる。
一体そのスマイルでどれだけの女を落としてきたかしら。気になるところである。


「寧々が淋しいクリスマスを送るんじゃないかと思って、な」


「ドーモ、アリガトウゴザイマシタ」


そんなこと思ってもないくせに。(それがわかっているから必然と棒読みの台詞になってしまうのはご愛嬌だ)
まるであたしを心配してた、みたいな言い方はズルい。そんなつもりがないってわかっていても子宮に熱が籠もっちゃう。


そんな瞬間、あたしは思い知らされるのだ。溺れている、と――


「ひとり淋しい寧々は、何がイイ?」


「…馬鹿にしているでしょ。まぁ、いいわ。何か食べたい。イタリアンパスタ!」


「OK。ちょっと待ってろ」


そう言って、イカやらトマトを切っていく。
堂に入ったその立ち姿……こいつは料理人になるつもりなのか。


カウンターにお行儀悪くも肘をついて、フライパンを覗き込む。


「何作ってくれるのー?」


「出来てからのお楽しみ」


思わず、ケチと呟いてしまう。その言葉に千歳は満足そうに笑った。


口惜しい。


口惜しい。


口惜しい。


そう思っている間にも、仕事で疲れた身体はそれを癒そうとあたしを眠りへと誘った。


おいしそうな匂いが鼻腔をくすぐったことであたしの意識は再び浮上。


いつの間にか寝てたみたいで、目を擦りながら体を起こすとあたしよりも大きい、骨ばった指がパスタとカクテルを作り上げていた。
ああ、一度でいいからその指に支配されてみたいと思うのは女の性である。


「ん…」


「起きたか。ちょうど出来たぞ」


カウンターの上に相も変わらず料理をしないあたしにとってみれば妬ましい完成度の高いパスタとカクテルが置かれる(普段あたしの食生活は大方デリバリーかコンビニである)




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