1人淋しく、寒空の下、煌びやかな都会の街を歩く。
周りを見れば、カップルだらけ。


つい数十分前まで仕事をしていたあたしはなんだったのかと恥ずかしげもなく路上で叫びたくなってしまう。(さすがに我慢しますよ。社会人ですから)


「…さむい」


手を擦り合わせて、白い息を吐き出す。
心も身と同じく寒いまま。


つい先日までは同じく独り身だったくせにあの裏切り者・あみかはとっとと仕事を終えた須藤君に捕獲されて。代わりにあたしがあみかの残りの仕事を片づける羽目になるし。(今度あみかにはランチを。須藤君には料亭を奢って貰おうと目論んでいる)


「暖まりに行こう」


少しだけ足早になる。
ヒールの踵を高々と鳴らし、掛け始めた。


今日は開店しているかわからなけど、行ってみることにする。
…ヘタをするとあたしが大火傷する確率も低くないけれど。そのときはそのとき。


「行ってみるか」


ココア色の髪を靡かせアスファルトを目一杯蹴りだしうきうき気分でRoseまでの道を歩いた。


+ + + + + + +


カランカランと扉に取り付けられたベルが鳴り、あたしが訪れたことを知らせた。
“取り敢えず”は経営してるみたいね。


問題はこれからだ。


女の喘ぎ声でも聞こえてみろ。絶対にあいつのとある一部分を蹴り倒してやる!


「イラッシャイマセ」


いつものおざなりな言葉に安堵すると同時に、まだ安心できないぞ、と力む。
千歳の手癖の悪さは天下一だ。クリスマス、なんて絶好のチャンスに女と寝ていないだなんてアリエナイ。


「女は?」


面倒な手間はあたしも千歳も好まない。
質問は簡潔に。そして返答も簡潔に。それがあたしと千歳の暗黙の約束事項。




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