クリスマス会の帰り道。
一段と肌寒くなった外気があたしを襲う。

「胡桃?」

目敏く身を縮こめたあたしに気づいた翔が振り返って、あたしの顔色を窺う。
うっ……。

急に近くなった距離にビックリして背を仰け反らせる。
まぁ、そんなことをされたら人は不思議がるんだろうけど……今のあたしの心情としては今すぐ背を向けて逃げ出したいくらい。

「っ、なんでもない」

少しでも暖を取ろうと、コートのファーに顔を押し付ける。
(赤くなった顔を隠すためでもあるけど)

勿論不思議がる翔。
ああ、こんなことなら違う道から帰ればよかった。


『星野君、胡桃をよろしくね』


親友の言葉を思い出して重たい溜息を吐き出す。
もうっ、香奈枝のお節介!

すると首回りが不意に暖かくなった。

「?」

「寒いだろ」

自分も鼻の頭を赤くしているのに、あたしにマフラーを貸すなんて翔はやさしすぎる。
………そんな翔に惹かれてしまうのも時間の問題だった。

「莫迦」

「?」

「ふん」

可愛げねぇな、なんて言うくせにあたしを見放さないでくれている翔はあたしにとって、光だった。




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