こいつは、陰巳(おんみ)怜。 私の家の隣近所のうちとライバル家の陰陽師家末裔。両家はかなり仲が悪く。つまりは私も怜とは犬猿の仲だ。 ……にしても寒い! そう感じた途端、空から白いものが降ってきた。 「あっ!」 思わず歓喜の声を漏らす。 クリスマス・イブの日に雪だなんて、素敵過ぎる! (こいつがいなかったらもっと素敵に見えるだろうけど) 「――なぁ、バ楓」 「だ、か、ら、バカと楓を混ぜるな」 ここはきちんと訂正させてもらう。 私の名前は“楓”であって、“バ楓”なわけじゃない。 「まあ、なんでもいいけどよ」 いいのかよッ! 口を開くことすら億劫で怜の言葉を待つ。 「メリークリスマス」 きょとん、と目を瞬く。 こいつの口からそんな言葉が出るだなんて、思いもしなかった。 「……………メリークリスマス…」 面と向かって言うのが辛くて、マフラーに顔を埋めながら、ぼそりと呟き返す。 聞こえていたのかはわからないが、怜の顔が綻びた気がした……。 fin. [*←]|top|[→#] |