こいつは、陰巳(おんみ)怜。
私の家の隣近所のうちとライバル家の陰陽師家末裔。両家はかなり仲が悪く。つまりは私も怜とは犬猿の仲だ。

……にしても寒い!

そう感じた途端、空から白いものが降ってきた。

「あっ!」

思わず歓喜の声を漏らす。
クリスマス・イブの日に雪だなんて、素敵過ぎる!
(こいつがいなかったらもっと素敵に見えるだろうけど)

「――なぁ、バ楓」

「だ、か、ら、バカと楓を混ぜるな」

ここはきちんと訂正させてもらう。
私の名前は“楓”であって、“バ楓”なわけじゃない。

「まあ、なんでもいいけどよ」

いいのかよッ!

口を開くことすら億劫で怜の言葉を待つ。

「メリークリスマス」

きょとん、と目を瞬く。
こいつの口からそんな言葉が出るだなんて、思いもしなかった。


「……………メリークリスマス…」

面と向かって言うのが辛くて、マフラーに顔を埋めながら、ぼそりと呟き返す。

聞こえていたのかはわからないが、怜の顔が綻びた気がした……。




fin.




-18-
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