+ + + + + + + 「…ったく! いっつも美味しいとこ取りの変人野郎め!」 ぶつくさと独り言を呟きながら、墓地の修繕工事に取り掛かる。 あんにゃろう。やっぱり殴ってやればよかった。 式神を3体創り出し、それぞれの役割分担を伝える。 あのウィスパーボイス男はとっくの昔にどこかへ行ってしまった。 「今日も勝てなかった」 ぼそり、と呟く。 いつもいつも、あいつに必ず負ける。 (しかも今日みたいな負け方が過半数を超える) 「確かに常世に送れたのはいいけど、」 常世とはこの世ならざる場所――そして、変化のない神域。 そこが本来の妖怪たちのあるべきところ。 それなのに。今日のように現世に迷い込んでしまう妖怪たちが沢山いる。 それを迷いなく常世に送り返すのが、私たち陰陽師の役目だ。 「何ぶつくさ言ってんだよ」 「ぎゃぁあああ!」 不意に冷めきった頬に温かいものが触れ、私は跳び上がった。 ……心臓に悪すぎる! 「何すんだよ、怜!!」 頬を押さえて振り返ると、チョコレートブラウンの髪が幻想的に靡く。 私の顔は必然的に歪んだ。 「何って、サシイレ」 差し出された手には、温かそうなアルミ缶。 そっと受け取りプルトップを開けた。 途端に湯気が溢れ出す。 [*←]|top|[→#] |