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「…ったく! いっつも美味しいとこ取りの変人野郎め!」

ぶつくさと独り言を呟きながら、墓地の修繕工事に取り掛かる。

あんにゃろう。やっぱり殴ってやればよかった。

式神を3体創り出し、それぞれの役割分担を伝える。

あのウィスパーボイス男はとっくの昔にどこかへ行ってしまった。

「今日も勝てなかった」

ぼそり、と呟く。
いつもいつも、あいつに必ず負ける。
(しかも今日みたいな負け方が過半数を超える)

「確かに常世に送れたのはいいけど、」

常世とはこの世ならざる場所――そして、変化のない神域。
そこが本来の妖怪たちのあるべきところ。
それなのに。今日のように現世に迷い込んでしまう妖怪たちが沢山いる。

それを迷いなく常世に送り返すのが、私たち陰陽師の役目だ。

「何ぶつくさ言ってんだよ」

「ぎゃぁあああ!」

不意に冷めきった頬に温かいものが触れ、私は跳び上がった。
……心臓に悪すぎる!

「何すんだよ、怜!!」

頬を押さえて振り返ると、チョコレートブラウンの髪が幻想的に靡く。
私の顔は必然的に歪んだ。

「何って、サシイレ」

差し出された手には、温かそうなアルミ缶。
そっと受け取りプルトップを開けた。

途端に湯気が溢れ出す。




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