伸ばされてきた手を払い除ける。 「ねぇ、ヴィクトリア、何が欲しい?」 「別にいらないわよ。あげる物もないし」 そう言うと、不意にブライアンが空を仰いだ。 ? 不思議に思って口を開こうとすると――先を越された。 「ヴィクトリアは知ってる? ヤドリギの下に女の子がいると、男が何をしていいのか」 「知らないけど………」 クリスマス、と言う行事にも気づかなかった女だ。 わかるはずもないのに。 むっ、と額に皺を寄せると、してやったり、とでも言いたそうなブライアンの笑みに気がつく。 何かを企んでる顔だ。 そろり、と後退しようとすれば、逃げ出す前に腕を掴まれて、ブライアンのテリトリーにカムバック。 不審げに見上げてみるが、にこりと笑うだけ。 「知りたい?」 ここは全力でお断りしたい! でも、断ってもきっと無駄だと思うから、ブライアンの思惑通りの言葉を口にする。 「――知りたい」 そっか、と呟いて、ブライアントの距離が縮まった。 何を言わんとしているのか、すぐにわかった。 抵抗することは出来たと思う。 あとになって誰かに問われても明確な答はきっと出せないだろう。 けれど不思議と拒む気にもなれなかった。 きっと聖夜の所為だ、と思いながら瞳を閉じた。 fin. [*←]|top|[→#] |