金の髪を振り乱し息を乱しながら、あたしはこれまでにないほど走っていた。


見目だけは良いプラチナブロンドの悪魔から。


あいつは絶対にあたしを翻弄しあたしを困らせることに悦びを見出した魔王の使い悪魔に違いない!


先程捕獲されたあたしは逃げ出そうと必死になってその強固な砦を壊そうと力の限り抵抗していたが。それをあっさりと抑え込んで腕に仕舞い込んでいたブライアンは一角曲がるとこう言った。


「さて。次は追いかけっこをしようか」


そして彼の見事な気まぐれによって追いかけっこは開始されたのだ。


息を次の角を曲がったら整えようと速度を落とすと横から現れた人物にまんまと捕獲されてしまった。
手近な部屋で潜んでタイミングを計っていたらしい。


「つーかまえた」


やけに楽しそうな声音が憎らしくて腹立たしいことこの上ない。


「離して」


「だめだよ。ヴィクトリア。俺から逃げられるなんて――思うな」


ゾクリと低く鋭い声にびくりと身体がしなる。
その隙を狙ってブライアンはあたしを肩に担いだ。


「何するのよ! 離して」

「何度言わせればいいのかな、ヴィクトリア」


あたしは何度も彼に抵抗をしながら、ブライアンに抱えられてどこかに連れ去られていく。


あぁ絶対、神さまなんて信じないわっ!




-12-
[*←]|top|[→#]