HNで呼ばないで25
「俺、ハルでいいよ」
「えっ?」
ベッドの上でまったりと行為後の余韻に浸りながら呟くと、アキラが驚いたように顔を上げた。
「アキラに苗字で呼ばれると変な感じがするんだ……。俺が俺じゃないみたいな。だから、いままでどおりハルって呼んでくれよ」
ゴクッとアキラが息を呑む。大丈夫、もう身代わりじゃないってわかったから。俺の事、ちゃんと愛してくれてるって今なら確かに感じられる。
「俺の事好き、なんだろ?」
上目遣いで訊ねた。切れ長の瞳が柔らかく微笑み、額にそっと唇が降りてくる。
「言ったはずだ。ハルの事が好きだって」
「じゃぁ、証拠みせてよ」
「証拠? さっきのじゃ足りないって言うのか?」
甘えるように懐に潜り込むと、アキラが驚いたように目を見開く。
「足りないよ。だって、アキラは女の子にも人気があるし……俺、不安だもん」
「ハル……」
「アキラが他の子を助手席に乗せたりするの、嫌なんだ」
あの時、俺が彼女に感じた不快感はやっぱり嫉妬ってヤツなんだと思う。
好きな人には、俺だけを見ていて欲しい。自分がこんなに独占欲が強いなんて知らなかった。
俺は男だから、アキラに女の子が迫ったりしたらきっと勝ち目が無い。
だから……証拠が欲しい。
本当に俺を好きでいてくれるって言う証拠。
「わかった。俺の車にはハル以外乗せないって約束する」
ふわりと頭を撫でられて、顎を持ち上げられた。ゆっくりと唇が重なり、次第に深く濃密になってゆく。
「ハル、好きだ」
「んっ……ン……俺も……大好き」
甘く蕩けそうになりながら、自然と腕を背中に回した。互いの温もりを感じながら俺達は何度も熱い口付けを交わした。