HNで呼ばないで15

翌日、俺は全身の激しい筋肉痛に悩まされていた。
 
足や腕、背中が鉛を付けたように重く、歩き方もぎこちなくロボットみたいな歩き方になってしまう。

「よお! 何やってんだ?」

「〜〜〜っ」

 いきなり後ろからポンと背中を叩かれ、鈍い痛みに顔を歪める。

 ゆっくりとした動きで振り向くとすぐ後ろに雪哉が立っていた。

「おはよ。雪哉」

「なんだよ、変な動きして」

「昨日、スノボやったら全身筋肉痛でさ」

「スノボ? 珍しいな、おじさん達そう言うアウトドアスポーツ嫌いじゃなかったっけ」

 ギクリとした。 雪哉は俺の両親がインドア派だって事を知ってる。

 何もやましい事はないんだから、正直に言えばいいのに言葉を濁して視線を彷徨わせた。

「あ、えっとまぁ……そうなんだけど」

 ちょうど向こう側から女の子に囲まれて歩いてくるアキラが見えて心臓がドクンと大きく脈打つ。

 昨日あんな事言われて、どんな風に接したらいいのかわからない。

 ゆっくりと近づいてくるたびに俺の鼓動もどんどん早くなる。

 緊張して固まってしまった俺に一瞬、アキラが笑った気がした。

「何やってるんだ、早くしないと遅刻扱いにするぞ」

 それだけ言うと、俺の前を素通り。

 あれ? いつもと同じ?

 ホッとしたのと、少しガッカリしたのと混ざり合ってなんだか複雑な気分だ。

「拓海? どうした」

「ごめん。なんでもない」

 ちょうどチャイムが鳴って、俺は慌てて席に着いた。

 昨日のアレはやっぱりタチの悪い冗談だったのか。

 アキラの言動に、いちいち翻弄されてる俺って……。

 ぐったりと机に突っ伏する俺を、雪哉が不思議そうな顔をしてジッと見つめていた。



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