No title
菊は初めてだから、この場所で全てを奪ってしまうのはどうしても気が引けてしまう。これが他の誰かだったらそんな事はいちいち気にならないのだが菊だけは特別なのだ。
それなのに、菊は自分だけが溺れてしまうのは嫌だとしきりに訴えかけてくる。
「大丈夫。一緒に気持ちよくなる方法なら沢山あるから菊は俺の言う通りにしてればいいんだよ」
「でも……」
まだ何か言いたそうに眉を寄せる彼に苦笑しながら、アーサーは短く息を吐くと自らのベルトに手をかけボトムの前を寛げてガチガチに硬くなった自身と菊の昂りを一つに握りしめる。
「え……っや……ぁっ」
「ほら、これで俺もお前も気持ち良くなれるだろう?」
器用に強弱をつけて追いたてれば、強すぎる快感の波に堪えきれない嬌声が吐息と共に混じり始めた。
「あ、あぁッ! アーサーさ……、駄目っ声が……あっ、んんっ」
逃げ腰になってタンクに背を付けていた菊を抱き寄せ自分の首に腕を回させる。
「声我慢できないなら、俺の首にでも吸いついてろよ」
「んっ、あ、……は……っ」
わざと口元に首筋が来るように持って行ってやると、菊は夢中になってそこに吸いついて来た。そうしなければ声を堪える事が出来ないのだろう。
ぬめる体液が量を増しクチクチといやらしい音を響かせる。
髪から香るシャンプーのいい匂いが鼻腔をくすぐり、目眩がするほど官能的だ。
触れ合う性器が熱くて、熱くて、もうどちらの熱かわからない。
「あっ、……ふぁあっ! あついっ……アーサーさ……っや、出ちゃいます!……ぁっ、あ、あッ――!」
「――くっ……」
手の中に熱い飛沫が溢れて、床に滴り落ちる。同時に終わりが来るように仕向けたのだ。
はぁはぁと荒い息を吐きながら身体を預けてくる菊を抱きとめそっと背中を撫でてやる。
「気持ちよかっただろ?」
コツンと額を押し当てて訊ねれば、菊は小さくコクリと頷いた。
恥ずかしそうに凭れてくる姿が愛らしく思え、そっと頬を撫でて口付ける。
ぐったりしている菊の着替えを整えてやり、後始末をしていると静かだった空間に授業終了のチャイムが鳴り響いた。
二人きりの時間が消えてしまうのは惜しいけれど、いつまでもこうしているわけにはいかない。
「どうする? 教室に戻るか?」
「……そうしたいんですが、なんだか身体が重くて……上手く力が入らないんです」
行為の余韻が抜けきっていないのか恥ずかしそうに呟いて俯いてしまう。
「仕方ねぇ。じゃぁこのまま保健室に直行だな」
「えっ!? アーサーさんと一緒に保健室、ですか?」
ほら、と背中に乗るよう合図すると菊はギョッとしたように目を丸くした。
「だって菊は気分が悪いつって授業サボったんだろ? だったら保健室にいないのはまずいんじゃねぇ?」
心配症なルードヴィッヒ達に保健室に行って無い事ばれたら後々面倒な事になりかねない。
一体屋上で何をしていたのかと追及されるのはごめんだ。
おんぶはどうしても嫌だと言う菊に仕方なく肩を貸してやりながら、人気のない廊下を選んでゆっくりと階段を下りて行く。