No title
「なっ、何やってるんですか。アーサーさん!?」
コンビニから戻り、自分の部屋へ戻って来たところで菊は悲鳴にも似た声を上げた。
彼の目の前にはブリタニアエンジェルの格好をしたアーサーが魔法(?)の杖を持って仁王立ちしている。
「へへっ、待ってたぜ菊」
「なんですか一体!? 怖いですよ」
何か恐ろしい予感を感じ、一歩後ずさる。だが、それよりも早くアーサーが扉を閉めて入口を塞いでしまった。
「お前の願いを叶えてやろうと思ってな♪」
「私の願い……ですか?」
「そうだ。じゃぁ行くぞ!」
「へっ? ちょっ! 待って下さ……うわっ」
菊の話も聞かず、「ほあた☆」と言うまぬけな掛け声とともに杖が降り降ろされ全身が煙のようなものに包まれる。
「ケホッ、ケホっ、一体なんなんですか」
「おぉ! 大成功じゃねぇか」
感嘆の声を上げるアーサー。その視線の先にはゴスロリ風のメイド服に身を包み、頭には猫耳を生やした菊の姿。
「――え? なっ!? なっ! なんですかコレ〜っ!?」
自分の姿を確認し頭をぺたぺたと触りながら菊の絶叫が室内に響く。
「何って、お前の願望を叶えてやっただろ」
「は? 私はこんな姿になりたいなんて一言も…………!」
満足そうに頷くアーサーを見て、菊はハッとしたように机の上を振り返った。散乱していた筈の原稿がきちんと整理して置かれてある。
「あの、もしかしてアーサーさん……」
「あぁ。ばっちり読ませて貰ったぜ!(途中までだけど)しかし、知らなかったな。お前がこんな事したいって思ってたとは。でも、モデルの選択が悪いよな〜いくら恥ずかしいからって俺とフランシスってのはちょっと……」
「ち、違うんです! これは別に私がしたいと思っていたわけでは……」
じゃぁアレはなんなんだ? と、尋ねられたら返事をする事が出来ない。
見られてしまったと言うショックと、自分がこんな姿になってしまったと言う恥ずかしさで脳内がパンクしてしまいそうだ。
「……まぁ、なんでもいいや。それより菊……案外そう言う格好も似合うな」
そう言いながら、アーサーが菊の腕を掴み引き寄せる。
「この耳もリアルに出来てるし…」
「ひゃっ」
耳に息を吹きかけながらお尻を撫でられ、菊の身体がびくりと跳ねた。