No title
アーサーカークランドが部屋を覗いた時、菊はちょうど退席していた。
いつもきちんと片付けてある机の上にはペンと紙が散乱していて、アーサーは首を傾げる。
「おかしいな、 菊のやつ何処にいったんだ?」
前もって遊びに行く事は連絡していたのでそう遠くへは行っていないのだろう。
そもそも玄関の鍵は開いていたのだからきっと直ぐに戻ってくるはずだ。
そうタカを括ったアーサーは適当な位置に腰を下ろし暫く待ってみることにした。
だがいくら待っても彼がなかなか戻ってくる気配がない。
だんだん退屈になってきて、アーサーは何気なく目の前に置かれている一枚の紙を手に取った。
「なっ、なんだこりゃ!?」
その紙を見るなりアーサーはブルブルと震え、暫く固まってしまう。身体の温度が上昇し、顔が茹でたたこのように赤くなっていく。
その紙には猫耳にメイド姿をしたアーサーが、フランシスに卑猥なポーズを取らされ、あれやこれやとセクハラを受けるといった内容の漫画が描かれていて (しかも上手い) 思わず目が点になった。
(なっ、なっ!? なんで俺がこんな!?)
この漫画は一体誰が描いたのか? ここは菊の家で、確か一人暮らしの筈。と、言う事はこれは菊本人が描いたと言う事になるのではないだろうか?
よくみたら筆跡も彼の物と殆ど変らない。
普段のホワンとした雰囲気の菊が何故こんなものを……。
理解出来ずに頭を抱えるアーサーだったが、二次元萌えを理解する脳は元々彼には備わっておらず、彼は自分に都合のいい解釈を始めた。
すなわち、菊は恥ずかしがりやなので自分の願望をそのまま漫画にしたのではないか? と、言う事。
かと言って自分自身を描くなんて事は出来ない為、代理としてアーサーとフランシスを使ったのではないか?
(そうか……菊は本当はこう言う事がしたかったんだな!)
アーサーは書きかけの漫画を手に取るとじっくりと読み始めた。自分が辱めを受ける漫画など本来なら読みたくもないがこれが菊の願望だと思えば、我慢できなくもない。
だが……。
「ぅあ〜っ! 駄目だっ! 俺には読めない。なんで俺がフランシスに……」
先の展開があまりにも恥ずかしすぎて、アーサーは原稿を置くとぱたりとその場に倒れてしまった。
ちょっと読んだだけなのに顔が熱い。
「……猫耳に、メイド服……か」
読むのは無理だったが、実際に本人に着せてみたら意外とイケるんじゃないか?
ふとそんな事を考え、何処からともなく先端に星の付いた長い棒を取り出しにやりと笑った。