No title
「今日の菊は最高だったな」
火照った身体を布団に横たえていると隣に居るアーサーが満足そうに微笑んだ。
「アーサーさんはヤリ過ぎです!」
「仕方ねぇだろ? 菊がいつも以上に可愛かったんだから」
「だからって……その、何度もスる事ないじゃないですか」
あの後結局、アーサーに促されるまま布団の上に押し倒されて何度も何度も貫かれた。
いつもなら多くても二回まででもう無理だと拒絶するのに、それが出来なかった自分自身に驚いている。
快楽に溺れてしまった自分の行為が恥ずかしすぎて、自然と頬が赤くなってしまう。
ふいとそっぽを向いてしまった本田をアーサーが抱き締めるように腕を絡めてくる。
「でもすげぇ快かったんだろ? 珍しく自分から腰振ってたし」
「知りません! そんなのっ。もう、早く忘れて下さいっ!」
からかうような口調で言われ、堪らず自分の枕で頭を隠した。
出来る事なら忘れてしまいたい。そんな気分だ。
だがアーサーは当分忘れてくれそうもない。いやらしい笑いを顔に貼りつかせによによしながら本田の様子を見つめている。
今夜の事をネタにまた襲われてしまったらどうしよう。と、不安に駆られひっそりと本田は溜息を吐いた。
「やぁ、アーサー! 君も来ていたのか。そう言えばこの間の媚薬入りチョコレート、効果の方はどうだったんだい?」
数日後、二人でのんびりと休日を楽しんでいた所に、アルフレッドがやって来た。
「……媚薬入りチョコレート?」
「わっ! 馬鹿ってめっ! いきなり何を言い出すんだよっ」
聞きなれない単語に眉を顰める本田。慌てふためくアーサー。
「媚薬入りって何のことですか?」
「菊が食べたんだろう? アーサーの作った媚薬入……むぐっ」
「な、なんでもねぇ! コイツたまに笑えないジョーク言うんだよ。気にすんなって」
「……」
慌ててアルフレッドの口を手で押さえるアーサーだったが、ゆらりと立ち上がった本田の姿にサーッと血の気が引いて行くのを感じた。
「この間のアレはそう言う事だったんですね……何かおかしいとは思ってましたけど」
「い、いやほらっ……菊はいつも淡白だからたまにはハメ外してもいいんじゃないかと思ってだな」
「HAHAHA! 痴話げんかかい? なんだか面白くなって来たじゃないか」
「ちっとも面白くねぇっ!!」
「……アーサーさん」
本田は頬を引き攣らせながらにっこり笑う。その笑顔にアーサーは得体のしれない嫌な予感がした。
「しばらく家に来ないで下さい!」
「なっ!? なんで俺だけ追い出されるんだよっ!」
ピシャリと閉じられた扉の向こうでアーサーの焦った声が響き渡る。
「で、アルフレッドさん。さっきの話、詳しく聞かせてもらえませんか?」
「いいけど、顔が怖いよ……君」
怒りを滲ませながら笑顔でお茶を差し出す本田に流石のアルフレッドも頬を引き攣らせるのだった。