アレ・コレ考えたって4
(菊side)
「すみません、お二人とも無理に食事に連れだしてしまって」
「いや、俺達は別に構わないが……」
会議が終わった後、アーサーさんと顔を合わせるのが嫌で直ぐ隣にいたルートヴィッヒさんを強引に食事に誘ってしまいました。
しかも時間が時間だった為に居酒屋しか空いていなくて、適当な店に入ったまでは良かったんですがお口に合うかどうか不安で仕方ありません。
「そうだよ菊。俺達、こんな店来た事無いからすっごくワクワクしてる〜。どんな料理が出てくるんだろう?」
「そう言って貰えると安心します」
にぱぁっと花でも咲きそうなフェリシアーノ君の顔を見ていると、なんだか気分がホッとするから不思議です。
「俺、パスタが食べたいな〜♪ ねぇねぇ、ここパスタある?」
「さぁ? パスタはどうですかねぇ……店員さんに聞いてみないと」
「じゃぁ俺、聞いて来るよ♪」
ウキウキと心底楽しそうにフェリシアーノ君は立ち上がりその辺の女性店員に話しかけ始める。
「どうして彼は、女性相手になると生き生きしてるんでしょう」
「アイツの事はほおっておいてくれ。あまり度が過ぎるようなら殴ってもいいから。俺が許可する」
はぁ、と盛大な溜息を吐きながらルートヴィッヒさんがやって来たビールに早くも口を付ける。
「そんな事より、よかったのか? 俺達で」
「なんの話ですか?」
「いや、最近いつも会議が終わるとお前はアーサーと共に行動しているみたいだったから本当はアイツと食べに行く予定だったんじゃ……」
「……いいんですよ。あんな人の事は」
昼間の事を思い出すと、恥ずかしすぎて今でも腹が立ってきます。何も休憩中にあんな場所で最後までしなくても……。
「あんな人ってお前……」
「ルートヴィッヒさんが気にする必要なんてないです。ささ、今日は私のおごりです。嫌な事忘れてパァっと飲んじゃいましょう!」
「なんだ、今夜は本田も飲むのか? 珍しいな」
「私だって飲みたい気分の日くらいありますよ」
「……そう、なのか?」
ルートヴィッヒさんは一瞬驚いたように目を見開いたが、何かを悟ったのか苦笑しながら「あまり飲み過ぎるなよ」と言ってグラスを差し出して来た。
カチンとグラスのぶつかり合う音と共に中に入っている黄金色の液体が揺れる。
口中に広がるほろ苦さと共に、この胸の内にある腹立たしさを払拭してしまえればいいのに。
そう願いながら、私はグラスの中身を一気に飲み干した。