アレ・コレ考えたって1
休憩中、菊に声を掛けようと思ったらあいつの周りには沢山の人だかりが出来ていた。
今日はあいつがホスト国になっているから仕方がないと言えば仕方がないんだが、何となく面白くない。
ルートヴィッヒやフェリシアーノ達と何を話しているのか知らないが、楽しそうに会話してやがる。
「アーサー〜、会議が終わったら久しぶりに飲みに行かないか?」
「悪い。今夜は俺パスな」
だって明日は菊の誕生日だから、会議が終わったら二人っきりで過ごす予定なんだからな(まだ誘ってもいねぇけど)
でも、そんな事言ったらお祭り好きなアルが絶対に首を突っ込んで来るから黙っておく。
「どうしたんだい? 君が酒を断るなんて珍しいじゃないか。もしかして、熱でもあるんじゃ……」
何も知らないアルは、信じられないものでも見たような顔をして俺のおでこに手を充てて自分の体温と比べる仕草をする。
「俺は至って健康だ。今日はたまたまそういう気分じゃねぇんだよ」
「無駄だぜアルフレッド。コイツこの間おイタしすぎて菊ちゃんに禁酒宣言されてるらしいから。約束破ったら二度とヤラせてもらえないかもしれないんだってよ」
突如湧いて出たフランシスが、ニヤニヤしながら俺の頭をくしゃくしゃっとかき回す。
「おい、止めろよてめぇっ! つか、なんでお前がそんな情報知ってるんだ!」
俺はこいつにそんな話をした覚えはねぇ。
「ん? あぁ、この間そんな感じのメールが菊ちゃんから届いてたからさ」
「メール!? おまっ、いつの間に菊とメアド交換なんか……」
「別にいいだろ、メールくらい。色々便利なんだよ、打ち合わせするときとか。まさかアーサー、自分以外と電話もメールもダメだとか言うんじゃないだろうな」
「んな訳ねぇだろ! 誰とメールしようがあいつの勝手だ。俺に束縛する権利はねぇよ」
まぁ、あまりいい気分はしないが。しかも、フランシスにプライベートなメールを送るくらいだから余程親密なんだろう。そう考えるとなんかすげームカつく。
「菊の一言で禁酒ねぇ……いつまでもつか楽しみだな☆」
「こいつの場合重要なのは禁酒より禁欲のほうだろ」
「うるせーっ! ほっとけよ」
そうやってギャーギャーと言い合いをしていると、不意に視線を感じた。
顔を上げると、向かいに座っている菊がジッとこちらを見ていた。一瞬だけ目があったが直ぐに他の国に話し掛けられて、視線が外れる。
穏やかな微笑みで会話をしている菊。
正直言うと、俺以外のやつに笑い掛けて欲しくない。
俺の心の中に黒い感情が澱のように蓄積されていく。
「おいおい、眉間に深いシワが寄ってるぜ」
からかい口調のフランシスに額をつつかれハッと我にかえった。
俺、そんな酷い顔してるのか?
「ちょっと俺、トイレ行ってくるわ」
「HAHAHA! なんだう○こなら黙って勝手に行けばいいじゃないか」
「ちげーよ馬鹿っ!!」