お酒はほどほどに4

どうしよう。こんな……、みんなが見ている前で熱いキスをするなんて。

恥ずかしいのと、いきなりの出来事で戸惑っているのとで頭の中はぐちゃぐちゃ。

アーサーさんのひやりとした指先がスーツの裾をたくし上げ腹を撫でた時、ようやく我に返った私は渾身の力を込めて両手で彼の身体を突っぱねた。

「や――っ、止めて下さいっ!」

「止めろって言ったって、嫌がって無いのは俺が一番よく知ってるんだぜ? ククッ、人に見られると興奮すんだろ、お前」

「馬鹿な事言ってないで、帰りますよ」

とてもじゃないけれど、パーティを楽しむどころの話では無い。このままココにいてはアルフレッドさんに迷惑が掛ってしまうだろうし、何より周囲の視線が痛い。

「すみません、アルフレッドさん。折角呼んでいただいたのに」

「あ、あぁ……」

私はアーサーさんの腕を掴むと、挨拶もそこそこに脱兎のごとき速さで会場を後にした。


「なんだよ、ちくしょー俺まだ全然食って無かったのに」

「……それは貴方が悪いんですよ! 沢山の人が居る前であんな事するから」

帰りのタクシーの中。不満を隠そうともせず不貞腐れるイギリスさんを見て思わず大きな溜息が洩れた。

私だって、一,二杯飲んだだけで殆ど食べ物に口を付けていません。

今思い出しても恥ずかしすぎて、顔から火が出そうなほどだ。

次の世界会議の時、一体どんな顔をして出ればいいんでしょう。考えるだけで胃が痛くなりそうです。

「……それはまぁ、悪かったと思ってるけどさ。……駄目なんだよ俺」

「え?」

「菊が俺以外の誰かと喋ってんの見るのすげー嫌なんだ。そんなに飲んだつもりは無かったんだけど、アルと仲よさそうに話をしてるの見たら許せなくて、ついカーッとなっちまった」

「アーサーさん……」

それって、もしかしてアルフレッドさんにやきもちを妬いていたと言う事でしょうか? 

まぁ、その前にフランシスさんと暴れてたから、思った以上に酔いが回っていたと言う事も考えられますが。

もし私が似たようなシーンを目撃したら、やっぱりいい気分はしないだろう。もっとも、どれだけ腹が立っても私は人前でキスしたりなんて出来ませんが。

「もう、いいです。アーサーさんの気持ちはよくわかりましたから」

彼の肩に身体を預け寄り添うと、頭をくしゃくしゃっと掻きまわされた。

「お前の家着いたら、二人でまた飲み直そうぜ」

「……まだ飲むんですか?」

「たまにはいいだろ? 俺、全然飲み足りねぇし。二人っきりなら邪魔も入らないから」

顎を撫でられそっと上向かされる。淡いグリーンの瞳に見詰められてどきんと胸が高鳴った。

「わかりました。少しだけなら付き合います」

「じゃ、決まりだな」

アーサーさんがシートに私を押し付けて、そっと触れるだけのキスをした。


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