露日7
「ねぇ、いい声で啼いてよ。彼の時みたいにさ」
「い、嫌ですっ……んっ絶対に声なんか、……ぁっ、上げませんから」
「ふぅん、そう」
恐ろしい程冷たい返事が返って来たかと思うと、イヴァンさんは急に上体を倒して勢いよく腰を揺すり始めた。
ズンズンッと身体の中から犯されていく感触に吐き気すら覚える。
「せっかく可愛がってあげようと思ってたのに、仕方がないね」
今までの何処が”可愛がって”いたと言うのか。はなはだ疑問ではあるが、どうやらイヴァンさんを怒らせてしまったようで、無茶苦茶に突き上げられてギシッギシと机が軋む。
「あっ、く……くるし……っ」
訳がわからなくなるほど打ちつけられて息が出来ない。突き上げられるたびに悲鳴にも似た声が洩れて目尻に涙が浮かんだ。
とにかく早く終わって欲しくて、苦痛に耐えているとイヴァンさんのモノがある一点に触れ反射的に身体がのけ反った。
「うっ、は……ぁっ!」
苦痛より快感が勝るなんて信じたくない。アーサーさん以外で感じてるなんて絶対に認めたくないのに、その場所から生まれた甘い感覚に全身が支配される。
「あっ! あんっ、駄目です……ソコは……あぁっ!」
「へぇ、イイ声だね。ゾクゾクするよ」
イヴァンさんの面白がるような声も、もう気にする余裕など無く自分自身の反応が信じられなくて、机に頭を擦りつけてそれに耐える。
けれど、一度口を吐いて出た喘ぎは堰を切ったように溢れ出し、突き上げるたびに自分でも嫌になるほどの切ない声が洩れた。
「そうそう、最初からそうやって啼いていればいいんだよ」
イヴァンさんの舐めるような視線や声がやたらと耳につく。
与えられる刺激に対し従順に反応する身体とは対照的に私の心はどんどん冷え切って、暗い闇に放り出されたような気分だ。そのギャップが辛くて、奥歯をギリッと噛みしめた。
いっそ、意識を失ってしまえればいいのに、縛られた腕が痛くて気絶する事も出来ない。
「んっ、く……はぁはぁっ、あっ、あっ」
とにかく早く終わって欲しい一心で、私の中で好き勝手に動いているイヴァンさんを締め付けると、彼が色っぽい吐息を洩らした。
「あぁ、凄い。もう出ちゃいそうだよ……」
やっと、終わる。そう思った矢先――。一際深く突き上げてから、ドクンドクンとナカでイヴァンさんが弾けるのを感じた。
「――はぁ。まさか、これで終わり。だなんて思ってないよね?」
「えっ!?」
縛られていた手首が自由になり、繋がったまま身体をグルンと反転させられる。机の上に背を乗せた状態で私の足を肩に担ぐと、一度はなってもなお硬さを保ったままのソレで小刻みに腰を揺すり始める。
「ま、まだ続けるんですか?」
「勿論だよ。僕が満足するまで離さないから」
にっこりと、表情の読めない顔で言われ私は目の前が暗くなるのを感じた。
「僕は、君が好きなんだ。だから、いつまでもこうして繋がっていたいよ」
「――っ」
私は、貴方なんか大嫌い。そう言えたらどんなに楽か。
悪魔のような囁きを聞きながら、彼の責め苦は続行された。