露日4
「どうする事が賢明なのか、聡明な君ならわかるよね?」
「くっ!」
イヴァンさんの目が細められ、ねめつけるような視線がなんとも気持ち悪い。
私が我慢すれば、それは回避できる。ですが、好きでも無い相手と寝るなんて事……。そんな屈辱私には耐えられそうにありません。かくなる上は――っ!
「おっと! そう簡単に死なれちゃ困るんだよね……」
イヴァンさんの大きな腕が私の両手を軽々と掴み、空いている方の手で服のポケットを探る。
「小刀が六本……か。駄目だよ、本田君。命は大切にしなきゃ」
隠し持っていた武器を全て奪われ、壁に押し付けられたまま窘めるようにそう言うと半ば強引に唇を奪われた。
背けようとする顎をしっかりと固定して、硬く閉ざした歯列を舌で強引にこじ開けようとする。
「んっ! んんっ」
息苦しくてほんの少し割り開いた隙間から熱いぬめっとした舌が侵入してきてゾッと背筋が凍りつく。
「いたっ」
思いっきり歯で舌を噛んでやった拍子にイヴァンさんの力が緩み、私は胸一杯に新鮮な空気を吸い込んで彼と距離を取った。
「……痛いなぁ。駄目じゃないか、噛んだら」
口の端から血を垂らしながら、笑顔を崩さないイヴァンさんが近付いて来る。
「こ、来ないでください!」
顔は笑顔だが、目が全然笑っていない。ゆらりと立ち上る真っ黒いオーラに圧倒されて、身体が竦んでしまう。
「そんなに拒絶しないでよ。僕はただ、君と仲良くしたいだけなんだ。好きな人に冷たくされるのって悲しいよ」
「貴方が興味あるのは私じゃなくて、私の身体でしょう?」
「ウフッ、そうだよ。相手を深く知るには身体からってね」
グッと伸びて来た指に腕を掴んで背後を取られ、そのまま机に突っ伏させられた。
ギリッと骨が軋むほど強く握られて、背中で組まされた腕が悲鳴を上げた。そのまま何か紐のようなもので手首を縛られる。
自由が利く足でもがいてみても、机ががたがた言うだけで、押さえ付けられていては何も効果は無い。
「離して下さいっ!」
「嫌だよ。せっかく優しくしてあげようと思ってたのに、君は一筋縄じゃいかなそうだから」
冷たく硬い声が飛んできて、ベルトのバックルが外される。慣れた手つきでズボンのホックを緩め、片手で私を押さえ付けたままもう一方がするりと下着をかいくぐり恐怖で萎えている私自身に触れた。