露日1
誰も居なくなった会議室はシンと静まり返っていて、ひんやりとした空気が漂っていた。
「やっと、誰も居なくなったな」
ふぅっと息を吐き、待ちわびたようにアーサーさんが近付いて来る。
「そ、そうですね」
次の展開が読めてしまい、思わず顔を背けた私の頬をアーサーさんの白い指先がなぞり仰向かされる。
そして、壁に押し付けられるような形でゆっくりと顔が近くなり――。
「だ、駄目です。アーサーさん! ここは会議室ですよ? 誰か戻ってきたらどう言い訳するつもりですか!?」
「大丈夫だって。鍵はちゃんと閉めたし」
「そう言う問題じゃ……っ」
私の話なんか全く聞かずに、服の中に手が侵入してくる。
「……っ……んっ」
キュッと胸の飾りをつままれて、ゾクッとした甘い痺れが腰にクる。
「……は……ぁっ、マズイですって……こんな所じゃ、へ、部屋へ行きましょう?」
「俺、そこまで待てねぇよ。ずっと我慢して来たんだ」
「ん! んんっ」
噛みつくようなキスに呼吸がままならない。閉じようとした股の間にアーサーさんの膝が割って入り、壁に縫い付けられるような形で手を押さえ付けられた。
「ぁ……っ」
空いている方の手で胸を弄り、熱い唇が首筋、鎖骨へとゆっくりと降りてくる。頭では、駄目だとわかっているのに身体はそれを裏切り如実に反応を示していた。
「なんだ、菊だって興奮してるじゃねぇか」
「っ! そ、それは貴方が触るからですよっ」
恥ずかしい事実を指摘され、顔から火が出そうなくらい熱くなる。
ベルトを緩め、ズボンの隙間から手が侵入してきて、すっかり興奮の兆しを現し始めたソレに触れられて身体がびくんと震えた。上下に軽く擦られただけなのに、私ははしたない喘ぎ声を上げてしまいそうになる。
「すっげ、もうグショグショじゃん」
すっと先走りで濡れた指を見せ付けるように舐め、ニッと悪戯っぽく笑う。その瞳の奥でぎらぎらと輝いている欲望の色に充てられて身体の奥が疼いた。
そんな私の反応を見越したのか、アーサーさんの手がお尻に触れて、いやらしい手つきで双丘を撫でる。
「ん……あ、んっ」
「どうしたんだよ、嫌だったんじゃないのか?」
腰が揺れてるぜ。と、揶揄するような声で囁かれ、恥ずかしくてアーサーさんの肩に顔を埋めた。
太腿に当たるアーサーさんの熱を感じ、先程感じた疼きがどんどん膨らんでゆく。
「なぁ、菊。もう挿れたい。まじで俺、我慢できないんだ」
耳元でそう囁かれ息が詰まった。
つい一時間程前までみんなが集まっていた会議室で、こんな卑猥な事をしてしまうと言う罪悪感はあるものの、己の欲求に抗う事が出来ずに私はコクリと頷いた。
それが、全ての悪夢の始まりだった――。