正月5

「いえ、そのちょっと近すぎるのではと思いまして」

「なんだよ、ただのスキンシップじゃねぇか」

唇を尖らせて不満を口にするアーサーさんはまるで子供のよう。

「もう少しお前もオープンになったっていいんじゃないか?」

「そんな事言われましても、これは性格ですから……」

自分の欲求をストレートに表現する。それは、私が最も苦手としている所です。性に関しては特に、イケナイ事をしていると言うイメージが強いですから欧米人のようにオープンになんてとても出来るわけがない。

「ふーん、性格ねぇ」

アーサーさんは風呂の縁に凭れ、ふぅっと息を吐くと空を見上げた。

立ち上る湯気が、漆黒の空へと吸い込まれていく。

「綺麗だな」

「えっ?」

「ここから見る景色だよ。景色を見ながら夜空を見上げると、昼とはまた違う雰囲気があって、凄く綺麗だ」

「アーサーさん……」

驚きました。いままで全くそう言う事に興味がないと思っていたアーサーさんの口からそんな言葉が出てくるなんて。

「でも……月明かりに照らされたお前の方がもっと、綺麗だ……」

「――っ」

「俺、お前の事が好きで堪らないんだ。菊の全てが愛しくて、お前とずっとこうしていられたらいいなと思ってる」

スッとアーサーさんの手が伸びて頬に触れる。不意打ちでそんな事を言われると、どう反応していいのかわからなくなってしまいます。

アーサーさんのグリーンがかった瞳が愛しそうに細められゆっくりと近づいて来る。

「なぁ、キスしてもいいか?」

鼻と鼻がくっつきそうな距離でそう尋ねられ、顔がカッと熱くなった。

「……アーサーさんはずるいです」

「ん?」

「こんな告白されて、嫌だ。なんて、言えるわけないじゃないですか」

「それも、そうだな」

クッとアーサーさんが喉で笑い、私もつられて笑ってしまった。

身体を捩ってアーサーさんと向き合うような形になり背中に腕を回して自分からそっと口付ける。


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