我慢比べ7
(しかし、フランシスに乗せられて買ったのはいいがアレ、どうするかな)
熱いシャワーを頭から浴びながら、昨日届いたばかりのモノをどう扱おうか考えていた。
お茶の誘いを断られて以来、なんだかんだでお互いに話すきっかけが掴めず、ズルズルと今日まで来てしまった。
世界会議終了は明日の夕方。本田と気まずい関係のまま、また離ればなれになるなんて考えたくない。
そんな事になったら、二人の関係は自然消滅なんて事もあり得るかもしれない。
最悪の事態が頭を過り、慌ててブルブルと首を振った。
と、その時。
ピンポーンと、弾むような音が浴室にまで響いて来た。
一体誰だろう? フランシスならピンポンを嫌がらせのように連打するに決まっているし、アルフレッドがわざわざ部屋を訪ねて来る筈は無い。
律儀にチャイムを鳴らすなんて、まるで本田みたいじゃないか。
慌てて素肌にバスローブを羽織り、頭を拭きながらドアへと向かう。
その間も一定のタイミングでチャイムは鳴り響き、時折コンコンとドアをノックする音まで聞こえてくる。
「はいはい、今開けるって。たく、誰だよ人のシャワー邪魔する奴は」
ぶつぶつと文句を言いながらドアを開けると、そこに居たのは真っ白いスーツを身に纏った本田だった。
「お、お前。なんで……」
まさか本当に彼が立っていると思っていなかった為、呆けたような声が洩れた。微妙な間が二人の間に落ちる。
「あ、あの……お邪魔でしたか」
不安そうに尋ねられて、アーサーは慌てて首を振った。
「い、いや全然! 邪魔なわけ無いだろ。ってゆーか、なんで……」
「これを、返そうと思って来たんです」
スッと差し出されたそれは、先日アーサーが彼の部屋に忘れて行った上着だった。
「明日で会議も終わってしまいますから、今日中にお返ししておかなければと思いまして。本当は、もっと早くに返すべきだったんですが」
チラリとアーサーの胸元に視線をやって、本田は恥ずかしそうにカァッと頬を染めた。
そんなに意識されると、なんだかこっちまで照れてしまう。
「で、では、私はこれで」
そんな微妙な空気に居心地の悪さを感じたのか、本田はくるりと踵を返しその場から離れようとする。
「なんだよ、もう帰るのか? もう少しゆっくりしていけよ」
「いえ、私の目的はもう果たしましたから。それに、長居するとアーサーさんが風邪をひいてしまいます」
「このくらいで俺が風邪ひくわけないだろ。そんなに俺と一緒に居るのが嫌なのか」
今日を逃せば次はいつ会えるのかわからない。切なげに眉を寄せ尋ねると、本田は小さく首を横に振った。
「嫌だなんてそんな! むしろ離れたくないくらいなのに」
「だったら、もう逃げるなよ。今夜はずっと俺の側に居ろ」
グッと腕を掴み自分のほうへと引き寄せ、強く抱き締める。
「…………はい」
ほんの一瞬、本田は困った顔をしたが、やがて諦めたのか躊躇いがちにそっと腕を絡めた。