我慢比べ4
「なんでもないんです」
「?」
自分はいったい何を考えているのだろう。
人の秘め事を想像するなんて。やっぱりどうかしている。
それほど昨夜途中で止められたのがショックだったと言う事か。
自分でもこんなに動揺するとは思っていなかった為、困惑を隠しきれずにいる。
「おっ、こんな所にいたのか」
本日一番大きな溜息を吐いたその時、背後から聞きなれた声がして本田はびくりと肩を震わせた。
「あっれー、アーサーだぁ。珍しいね、何の用?」
「別にお前に用はねぇよ。俺が用事なのはこっち」
「……っ!」
ポンと肩を叩かれ、思わず息を呑んだ。一体どういう顔をしていいのかわからず本田は俯いたまま動けなくなった。
「夕べは悪かったな……その、お詫びと言っちゃなんだが俺の部屋でお茶でもどうだ?」
そんな本田の行動を予測していたのか、アーサーは気まずそうにそう切り出すと頬を掻いた。
「お茶、ですか……」
「あぁ。すげぇ珍しいお茶の葉を貰ったんだ」
明らかに気を遣っているのがバレバレで、なんとなく違和感を覚える。お茶に誘ってくれたのは嬉しいが、二人きりになるのは気まずい。
「そうですね、フェリシアーノ君も一緒でいいのならお邪魔します」
「ヴぇ〜っ、なんで俺もなの!?」
呑気に二人のやり取りを見詰めていたフェリシアーノだったが、突然腕を掴まれてオロオロと慌てた。
アーサーはアーサーで、「なんでコイツも一緒なんだよ」とあからさまに不機嫌な顔をして見せる。
「だって、美味しいお茶ならみんなで飲んだ方がいいじゃないですか。それに、この後フェリシアーノ君暇なんですよ。ね?」
「確かに暇だって言たけど、俺ヤだよ〜」
「美味しいスコーンがありますよ」
「パサパサしてて、マズイからやだぁ」
ヴぇ〜っと半べそかきながら首をブンブンと横に振るフェリシアーノ。
そんなにはっきりと拒絶しなくてもいいのに、と本田は慌てた。
「もういい。そんなに俺と二人になりたくないんだったら勝手にしろ!」
二人のやり取りを見ていたアーサーはとうとう怒って、行ってしまった。
「……怒らせちゃいましたね」
「ヴぇぇ〜」
どんどん小さくなってゆく後ろ姿を眺め、本田はふぅっと重い息を吐いた。