我慢比べ3

「――はぁ」

堤防沿いの大きな川を眺め、本田は大きく息を吐いた。結局、彼の服を持っては来たものの昨日の今日で会いに行く勇気が出ないでいる。

二人きりになった時の事を考えると気が重い。

そういう関係になった時、また昨日のように途中で止められてしまったら……。その事を思うと胃痛さえ感じるほどだ。

毎回あんな中途半端な状態で放置されたら欲求不満になってしまう。そんな事を考え、自然と溜息が洩れた。

「どうしたの、菊。元気ないよ」

そこにひょっこりと顔を出したのは緊張感の無い顔をしたフェリシアーノだった。

「そう、ですか? 私は元気ですが」

自分ではいつもどうりにしているつもりだったのだが、何処かおかしかっただろうか?

フェリシアーノはボーっとしているようで意外と見ていたりするので侮れない。

「そんなに変ですかね、今日の私」

そう尋ねると、フェリシアーノはうーんと腕を組んで考えるような仕草をする。

「変って言うか〜、いつもより暗い感じがする。悩みがあるなら俺、聞くよ?」

ニパァっと花でも咲きそうな顔でそう言われ思わず苦笑した。

「悩み……ですか」

確かに悩んでいないでもない。昨日のアーサーの行動は不可解過ぎて戸惑っているのは事実だ。

アーサーは何かにつけて自分に卑猥な言葉を言わせようとする。

今までも何度か似たような事があったが行為自体を途中で止められたのは初めてだった。
何故彼がそこまで拘るのか理由がわからない。

もしかして、欧米諸国では自分から誘ったりするのが一般的なのだろうか?

目の前に居る彼も、ルートヴィッヒの前で卑猥な言葉を口にしたりするのか?

ふと、そんな事を考え思わずジッとフェリシアーノを見詰めてしまった。

「俺の顔に何かついてる?」

不思議そうに尋ねられ、思わずぶんぶんと首を振る。


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