我慢くらべ2
「たくっ、強情な奴。……ここまで来てなんで言わないんだよ」
「だ、だって……恥ずかしいじゃないですか。アーサーさんが言わんとしている事はわかりますけど、でも……」
「恥ずかしいって、もう何度もシてるだろ」
「それはそうですが……でも、私から強請るなんて恥ずかしすぎて」
モジモジと腰をくねらせながらも、はっきりと「言えません」と告げる本田にアーサーはガックリと肩を落とした。
「あ〜、もういいや。今日はもう寝ようぜ」
「――えっ!?」
溜息混じりに指を引き抜かれ、アーサーの身体が離れて行く。
戸惑う本田を余所に、アーサーはさっさとベッドから降りて脱ぎ捨てた着衣に袖を通し始める。
「……あの、アーサーさん。本当にもう、終わりですか?」
「あぁ。お前がシたくねぇ事強制してもつまらないしな」
「私は別に、シたくないなんて一言も……」
頬を赤らめてもごもごと口籠る本田を見て、アーサーは思わず苦笑した。
「お前も早く寝ろよ。明日に響くぞ」
ぽんっと軽く頭を撫で、額に軽くキスを落としてから部屋を出て行ってしまう。
一人取り残された本田は、しばらく茫然と去って行ったドアを眺めていたがやがて大きな溜息を吐いた。
「もう、なんなんですか」
中途半端に投げ出された身体は熱く火照ったまま、行き場の無い欲求が燻っていてそれを沈めなければとても眠れそうにない。
ふと見ると明らかに自分の上着では無い服が椅子の背もたれ部分に掛けてある。
十中八九彼が忘れて(置いて)行ったものだろう。
ベッドに腰掛けその上着に袖を通すと、彼の残り香が鼻を掠め下半身がズクンと疼いた。なんとなく彼に包まれているような気分になって手は自然と下半身へと伸びてゆく。
「――っ」
彼の上着を着たままこんな事をしてはいけないと頭ではわかっているのに、身体が言う事を利かない。
空いている手で胸の突起を弄りながら、クチュクチュと先走りで濡れた手を上下させると堪らず声にならない嬌声が洩れた。
「ん……は……ぁっ」
びくびくと身体を震わせるたびに、上着から彼の香りがしてその場に彼が居て抱かれているような錯覚に陥ってしまう。
「あ……ふ……アーサーさんっ……ぁあッ」
ゾクゾクするような甘い痺れが下半身に広がり、身体を弓なりにしならせて一際切ない声を上げると、手の中に白濁を放った。
肩で荒い息をしながら、ボフッとベッドに倒れ込んだ。熱が引いた後に残るのは、彼の上着でシてしまった罪悪感。
「はぁ、はぁ……私、何やってるんでしょう」
薄暗い部屋に、自嘲気味な本田の呟きが響く。
明日、この上着は返さないと。
そんな事をぼんやりと考えながら本田はゆっくりと目を閉じた。