ベッドに腰掛けて影山の姿を想像しながら自身に触れた。びくりと手の中で跳ねたソコは熱く、既に硬くなってしまっている。
『俺の服着て、何をしているんですか? 菅原さん』
なんて言いながら、熱っぽい目でオレを見下ろす影山の声が聞こえてきそうだ。 イケナイ事をしている自覚はあるのに、何時もより興奮している自分が居て戸惑いを覚える。
「影山ぁ、んん……ッ」
動くたびに鼻腔を擽る影山の香りに気分が高揚していき、自然と手の動きも早くなっていく。
トロトロと溢れた体液が自分の手を濡らしくちゃくちゃといやらしい音を響かせ、静かな室内に木霊する。
「ぁ……は……っ」
『乳首もこんなにビンビンにして……いやらしいッスね』
妄想はどんどんエスカレートしていき、空いてる手で自分の乳首をきゅっと摘まんだ。途端、電流が走ったみたいに甘い痺れが腰にクる。
もし今、影山から電話が掛かってきたらどうしよう?
ふと、サイドボードに置いたスマホが目についた。
オレがこんな事になっちゃってるなんて知ったら影山は軽蔑するだろうか? それとも――。
背徳感と快楽のはざまで思考がまとまらなくなっていく。 
『菅原さんが、こんなに淫乱だとは思いませんでした』
冷ややかな視線と、冷たい声が聞こえてきそうだ。その視線を想像しただけで、ゾクゾクと体の芯が震えてしまう。
「――っ…ごめ、影山……ぅ、っ……」
急速な射精感を覚え、鈴口に爪を立てた。声を押し殺し、手の中にびゅくびゅくと熱い迸りを感じる。
あぁ、ヤってしまった――。
高揚した気分が収まってしまえば、残るのは羞恥心と罪悪感。
明日からどんな顔して影山に会えばいいんだ!?
自己嫌悪に陥っていると、突然スマホが震えて着信の合図が鳴った。
画面に表示された「影山」の二文字を見て一瞬息が止まる。気付かないフリをしてしまおうか。一瞬そんな事も考えたけれど、何となく居た堪れなくて震える手で通話ボタンを押した。
「お疲れ様です。今、大丈夫っすか?」
「お、おぅ。どうした?」
耳に馴染んだ影山の声に鼓動がいっそう早くなった。
「特に用は無かったんっすけど、急に声が聞きたくなって」
今、何をしてたんですか? と、訊ねられてぎくりと身体が強張る。無意識のうちに胸元を掴んで、ハッとする。オレまだ影山の服を着たままじゃん!!
「い、いま? いまは……ええっと……勉強、かな」
「勉強……スか。邪魔しちゃ悪いんで切ますね」
少し残念そうな声に、罪悪感が募る。けど助かった。これで電話が切れる。そう思った矢先
「あぁ、そうだ。菅原さん俺のシャツ知らないっすか? 鞄の中に入って無くて……」
「え……」
電話口から響いてきた”シャツ”と言う単語に、ぎくりと身体が強張った。
まさか、今現在着用中だなんて言えるハズが無い。
「オ、オレの鞄の中に入ってたから一緒に洗濯して今度持ってくから」
「菅原さんのとこにあったんッスか。なんかすみません」
「いや、謝るのはオレの方だし……」
着用中の服をジッと見つめながらぼそりと呟く。サイズは同じなのに影山が着ていたと思うだけであそこまで興奮してしまった自分に正直びっくりだ。
「……やっぱ彼シャツの破壊力って、スゲーわ……」
「は!? え? 今、なん……っ」
思わず口走ってしまった事に動揺して、慌てて電話を切ってしまった。
電話の向こうで一体どういうことだ!? と、悶々とする影山の姿が見えた気がして思わず失笑が洩れた。
服を脱ぎ、部屋着に着替えて洗濯機へと放り込む。
取り敢えず、服は洗って返そう。影山への言い訳はゆっくり考えればなんとかなる……かな! 多分。