No title

「ねぇ、黒子っち」


「何ですか?黄瀬君」


「今日はすごく暖かいっスね〜」


「そうですね」


ふわふわとした髪が首筋に当たる。そして黒子の華奢な体は黄瀬の腕の中にすっぽりと収まっている。


天気の良い昼下がり。黒子は黄瀬の腕の中で静かに読書をしていた。
だけど後ろから彼の体温が直接感じるので集中出来ない。それに密着するのが少し気恥ずかしい。

「でも黒子っちの体温もすごく暖かいっスよ!」

「そ、そうですか」


もしかして顔が熱くなっているから、体温まで上がってしまったのではないでしょうか…?


黒子はそう思わずにはいられなかった。

「……あの、黄瀬君。いい加減離してくれませんか…?」

意識している事を気付かれたくなくて、身を捩りながら少しでも彼から離れようとすると…。

「嫌っス!」

「……っ」

抱き締める力を更に強められた。そして犬のようにべったりと甘えられる。


こんな感じでさっきから全く離してくれないのだ。
黒子は参ったなと思いながら、サラサラとしている綺麗な髪をあやすように撫でる。

「黄瀬君。今日はいつもに増して甘えん坊ですね」

「だって久々のオフっスもん!いーっぱい黒子っちに甘えて、充電しておきたいっス!」

「な、なんですか?充電って…」

「オレが生きる為の活力っス!黒子っち不足になったらオレ死んじゃうっスもん」

「……」

別にそんなものが切れてしまっても人が死ぬことはないと思う。相変わらず黄瀬の言動は大袈裟すぎる。

だけど、たまには良いかと思い、髪をぽんぽんと撫で続ける。

「最近、モデルの仕事は忙しいんですか?」

「うーん…。ぼちぼちっスね。てか、最近。女性モデルとの撮影の仕事が多いような気がするっス」

あはは、と苦笑ながら黄瀬は疲れたようにため息を零していた。

「……っ」

黒子はその事を聞いて、胸がズキンと痛んだ。
モデルをやっている以上、彼が他の人と密着するような仕事があったって仕方がないと思うし、そんな下らない事で嫉妬をするなんて心が狭いって事も分かっている。

だけど、やはり黄瀬が自分以外の誰かと密着するのは嫌なのだ。どうしてもヤキモチを妬いてしまう。

「黒子っち?どうしたんスか?顔を俯かせちゃって」

「いえ。何でもないです……」

「何でもないって顔…、全然してないっスよ!」

「わっ…!」

ぐるりと半回転をさせられ、ぎゅっと包み込むように抱き締められる。そして綺麗な手が背中を優しく撫でた。

「何か学校で嫌な事でもあったんスか?火神っちと喧嘩しちゃったとか」

「あ、いえ…!学校では何もないですよ!火神君と喧嘩もしてないですし」

「学校では…?じゃあ他で何かあったんスか?」

「あっ…!」

墓穴を掘ってしまったと思い、慌てて片手で口元を覆うが、もう既に遅い。
黄瀬が心配そうな瞳でじっと自分を捕らえるように見つめてくるので、隠す事が段々と心苦しくなる。

「すみません…。本当につまらない事なんですが…」

「黒子っちの話につまらない話なんてないっスよ!何でも言って!」

「そう…言われても…」

本当にこれはつまらない嫉妬だ。流石の黄瀬でも、呆れて物も言えなくなるじゃないかって思うくらいに。

どう上手いこと言い訳をしようかと頭の中でグルグルと考えて、必死に言葉を探すと…。

「黒子っち…、もしかしてオレには言えない事なんスか…?」

「えっ…!?」

くーんと犬のようにしょぼんとして、泣きそうな表情へと変わっていた。

「黄瀬君…!違いますよ!」

「だって黒子っち…。さっきからすごく言いにくそうなんスもん…!」

「だからそれはっ…!」

黒子はもう本当の事を言ってしまおうと思った。
元々口数の少ない自分が上手いように言い訳を考えるのがそもそもの間違いだったのだ。

服の裾を控えめに掴んで、絞り出すような声を出す。

「黄瀬君の事…だからですよ…!」

「へ…?オレの事…??」

「だって黄瀬君が…、女性モデルとの撮影が多いって言うから…!だからつい…、嫉妬をしてしまったんですよ…!」

「黒子っち…」

途切れ途切れの言葉で白状した途端、黄瀬はぽかんと口を開けてこちらを見下ろしていた。その視線が今は痛くて辛い。

「嫉妬…、してたんスね…」

「わ、悪いですか…!?ボクだって嫉妬くらいします…!」

黒子だって黄瀬の事が好きなのだ。好きで彼と付き合っている。だから小さな事でもすぐに嫉妬をしてしまうのは人間として当たり前の事だと思う。

顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに顔を逸らすと、ゆっくり頬を手で添えられる。

「き、黄瀬…君…?」

綺麗な瞳がじっと自分を捕らえる。黄瀬に聞こえてしまうのではないかと思うくらいに、心臓の音が煩く高鳴っている。

「全然悪くないっスよ…。むしろすごく嬉しい…!オレばっか黒子っちが好きって思っていたから…」

ふにゃりと柔らかい笑みを浮かべて、互いの額同士をこつん、と重ねる。

「そ、そんなこと…、ない…ですよ…」

「へ…?」

「ボクだって…、君が好きですよ…!」

「……っ」

ぎゅっと手を握って、自分からちゅ、と触れるだけのキスを交わす。

そしてすぐに唇を離した。

「く、黒子……っち…」

顔を赤く染めて、唇をそっと触れながら呆然と黒子の名を呼ぶ。

「ボクは普段…、感情が表に出なくて分かりにくい所もたくさんあるかも知れません」

でも…、と言っておずおずと黄瀬を見上げる。そして頬にもちゅ、と唇を落とした。

「ちゃんと黄瀬の事が好きですから…!」

「黒子っち…」

自分の気持ちを真っ直ぐに伝えると、黄瀬は嬉しそうに微笑んだ。
そして黒子の唇に啄むようなキスをした。

「んっ…」

ちゅ、ちゅ、と何度もリップ音が響く。硬く瞼を瞑って触れるだけのキスを受け入れていくと…。

「黒子っち…、大好きっス…」

「んぅ…!んんっ…」

そっと舌を差し込まれた。
触れるだけだったキスは深いモノへと変わっていき、黒子は少し苦しそうに顔を歪ませる。

「んっ…!んん…!」

「んっ…、可愛い…」

「ふっ…ぁ…!ふっ…、む…ぅ…!」

最初は歯の羅列を舌でなぞられ、次第に口内の中を犯されていく。
生温い舌が自分の舌にしっかりと絡んでいき、黒子の表情が段々と艶かしくなっていた。

「き…せ…くんっ…」

「ね、黒子っち。触ってもいい?」

「んっ…!ひゃっ…」

衣服の上から胸の尖りに触れられ、身体が自然と強張る。
黄瀬は黒子の緊張を解くように何度も深いキスを交わしながら、指の腹でぐにぐにと尖りを押し潰す。

「んぅ…!んんっ…!きせ…く…ん…!」

「怖がらなくても大丈夫…。ゆっくり力を抜いて…?」

「んっ…はぁ…!」

慣れた手付きがそっと衣服の釦を外していき、黒子の細くて白い肌を露にさせた。

「黒子っちの肌…、相変わらず白くて綺麗っスね…」

「あんまり…み、見ないで下さい…!恥ずかしい…ですっ…」

「恥ずかしがる必要ないっスよ。今この家にはオレと黒子っちしかいないんだから…」

「んっ…、ァ…!」

黄瀬の舌が自分の尖りを舐め上げ、全身からビリビリと電気のようなモノが走った。

「きせっ…くん…!」

「ふふ。乳首が弱い所も相変わらずっス…」

「はぁっ…!ん、くっ…」

意地悪な笑みを浮かべたと思った途端、其処を必要以上にぴちゃぴちゃと舐めて、時折甘噛みをしながら黒子の身体に快楽という名の刺激を与える。

「んぁぁっ…!き…せくっ…!そこばっかり…やっ…です…!」

「どうして?気持ち良いんでしょ…?」

「気持ち…いい…ですけ…どッ…!ひゃっ…!ぅぅ…!」

胸ばかり攻められて感じるなんて、これではまるで自分が女の子みたいではないか。黒子はその事が恥ずかしくて堪らなかった。

「でも、段々と硬くなっているっスよ…?」

「ンッ…、ぅ…!?」

ちゅう、と音を立てて強く吸い付かれる。

「やッ…!ああっ…!ンァッ…!」

いきなり強い刺激が身体中に襲ってきて、びくん、と身体が激しく仰け反り返った。

「はぁ…!はっ…、ぁ…!」

「黒子っち…、随分と早いっスね。溜まっていたんスか?」

「言わないで下さいっ…!」

本当の事を言われて黒子は恥ずかしそうに顔を背ける。
自慰行為というのは一度もした事がないし、やり方もイマイチ分からない。だから性欲が溜まっていても仕方がない話だと思う。

「じゃあ、今日はいっぱい黒子っちの欲を解消してあげるっスね」

「へ…?わっ…!?」

いきなりパンツごとズボンを引き摺り下ろされ、頭の中が真っ白になった。

すると黄瀬の唇が躊躇なく黒子の自身をくわえ始めた。


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