No title

なんだかこれってデートみたいだよなぁ。なんて思っていたら、

「……ニ……ニャァ……」

突然背後からか細い声が響いた。

「あ、猫だ」

よく見ると、茶色のトラ猫がトコトコと道路の方へと向かって歩いている。

その瞬間、猫の集団に怯えて顔を引き攣らせた真ちゃんの姿を思い出してしまい思わず顔がにやけてしまった。

「プッ……真ちゃん……」

「あ?」

呟いた瞬間、宮地さんの眉が不機嫌そうに寄った。

「あいつ、猫が歩いてるだけで草むらに隠れちゃうんっすよ。あのでけー巨体が俺より小っちゃくなってブルブル震えてんの、それがすっげー可笑しくて……」

「――つまんねぇ話すんじゃねぇよ」

恐ろしく低い声が響いたと思ったら、いきなり腕を強く掴まれベンチの背もたれに押し付けられた。

「えっ、ちょ……」

やべ、真ちゃんの話題は禁句だった? 

ついさっきまで笑ってたのに何処でスイッチが入ったのか、さっきとは打って変っってしまった空気に何も言えないでいると、

「お前、さっき俺がマジになったら靡かないやつはいないって言ったよな?」

鋭い視線で睨みつけられて反射的に肩が竦む。

確かにそう言った。言ったけど、それが今のこの状況とどう関係してくるのかイマイチ読み取れない。

「……それって、お前も例外じゃないって事だよな」

「!?」

一瞬何を言われたのかわからなかった。ジッと俺を見据えるその瞳には、獰猛な光が浮かんでいる。

俺を食らいつくしてしまいそうな肉食の獣のような瞳に射抜かれて、罠にかかった小動物のように動けなくなってしまった。

顎に長い指がかかり半ば強引に仰向かされる。あっと思った時にはもう、ベンチの背もたれに押し付けられるような形で唇を奪われた後。

「み、みや……んっ、んんっ!? ちょ……まっ……」

食いつくような激しいキスに呼吸がままならない。苦しくて顔を背けようとしたけれど許して貰えず熱い舌に翻弄される。

「あ、ふ……やめっ……」

冷たい手が学ランの中に潜り込んできて素肌に触れた。まさかこんなところで!?

さーっと全身の血の気が引いた。いくらなんでもと思うけど、今の宮地さんならあり得ない話じゃない。

「わ、わーわーっ! ちょっ、マジ! マジでこんなところでスるのだけは勘弁してくださいっ!! ケツが風邪ひくからっ!!」

「……っ」

慌てて力の入らない両手で身体を押し返すと、一瞬驚いた顔をした。

何か言いたげに口を二、三度開きかけ複雑な表情を作ったかと思ったら、いきなりプッと宮地さんが噴き出した。

「ククッ……なんだよ、ケツが風邪ひくって……ひくわけ、ねぇだろ。馬鹿、クククっ」

「えっ、いや……だって……」

よっぽどツボに入ったのか、直ぐには宮地さんの笑いは治まらない。

目尻に涙まで浮かべて肩を震わせている。


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