No title
下を向いていて表情まではわからないが、動揺を隠しきれないその仕草が可笑しくて堪らない。
グッと腰を掴んで抉るように揺すると高尾の身体に緊張が走る。
「ぁあっ、そんなにシちゃ、も、もたないっぁあ――っ!」
甲高い声を上げ、一際大きく仰け反った瞬間オレの手のうちに熱い飛沫が放出された。
「ごちそうさま」
両手を合わせて箸を置く。
テーブルを挟んで座っていた高尾は申し訳なさそうな表情で空になった茶碗を片しにかかる。
「洗い物当番は宮地さんっすよ」
「わかってるって、後でするからお前もこっち来いよ」
手招きすると、高尾はゆっくりとオレの隣に腰を下ろした。
「なんかすんません。味噌汁煮詰まっちゃって」
「いや、十分美味かった。味噌汁も、お前も」
「なっ!?」
腰を引き寄せて囁くと、耳まで赤く染めて絶句する。あまりにも予想どうりのリアクションが返って来るから、思わず失笑が洩れた。
「そう言えば、昨日は玉子焼きが焦げていたし、その前は魚が焦げてたな」
「それは、宮地さんが触るからっすよっ」
「オレが触ると料理を失敗するのか?」
「それは……っ」
グッと言葉に詰まり、ふいっと顔を逸らしてしまう。その仕草がオレを煽ってるようにしか見えねぇのに、コイツは無自覚だから正直言って困る。
「宮地さんが悪いんです。俺をこんな身体にして……」
「なんだそりゃ。つか、オレだけのせいじゃねぇだろ。高尾が誘ってんのが悪い」
「お、俺は誘ってなんか――っ」
ムキになって反論しようと顔を上げたタイミングで目が合い、顔を寄せると高尾は小さく「あっ」と声を上げ半ば条件反射のように目を瞑った。
キスを待っているような仕草を見ているとつい意地悪をしてみたくなる。
そっと頬を撫で、顎を持ち上げた。オレの指先に高尾がドキドキしているのが表情でわかる。
ダメだ、やっぱスゲー可愛い……。
「……ぷっ、ククっ」
「!?」
我慢出来ずに思わず吹き出してしまったオレの声で我に返った高尾が瞼を開き、目をぱちくりとさせて面食らった顔をする。