No title
「教えてくれてもいいっしょ? 俺と宮地先輩の仲じゃないっすか」
「……うぜぇ。つか、絶対に好きになってやれないのがわかってて、変に気を持たせたら可哀そうだろ」
「……なんで絶対好きにならないって、わかるんっすか? もしかしたらって事だって……」
「ねぇな」
即答だった。
「ほかの奴とか、絶対ねぇわ」
「……宮地さん。それって……やっぱ、好きな人いるって事っすね」
遠い目をして呟いた宮地さんの顔を見て、俺は確信した。
しまった! と、言う焦りと驚きの綯交ぜになった宮地さんの表情が可笑しくて顔がニヤける。
「もしかして、マジでアイドルに恋してたり? 手が届かない存在だから永遠の片思い、みたいな?」
「バーカ! いくらなんでもんなわけねぇだろ! てめぇ、轢かれたいのか?」
「え〜、気になるっしょ。ここまで来たら教えて下さいよ。つか、片思いなら告ちゃえばいいのに」
「それが出来たら苦労してねぇよ。つか、相手にもほかに好きな奴がいんだよ。敵わないってわかってんのにわざわざ玉砕しに行く馬鹿が何処にいるんだ」
「……へ〜、そうなんだ。つか、その人は付き合ってるんすか?」
その質問に、宮地さんは静かに首を横に振った。
「でも、時間の問題だろ」
なんて、諦めにも似た声を出す。
「付き合ってないんなら、告ればいいじゃないっすか。宮地さんにマジで迫られたら靡かないやつなんていないっすよ。消極的になるなんてらしくないって!」
「……」
宮地さんは何も言わなかった。ただ、黙って怖いくらい真剣な顔で俺をじっと見つめている。
「宮地、さん?」
「……なんでもねぇ。さ、この話はもう終わりな」
顔を覗き込んだら、ふいと視線を逸らされた。それに違和感を覚えたが、これ以上深入りして欲しくないと言った雰囲気が読み取れたので、俺は言葉をみ込んだ。