No title
「腰くねらせて……相変わらず敏感だな。お前。こんな人前で乳首弄られて感じてんの?」
「……ちがっ」
違うと首を振ってみても宮地さんには全部お見通しだ。聞こえる囁きは熱っぽく、身体の芯にゾクゾク響く。執拗に続く胸と耳への刺激に全身が震えてしまう。
「ん……っんぅ」
乳首を一際強く押しつぶされて、堪らず鼻から抜けるような声が漏れた。
その拍子、偶々横を通りかかった大坪さんと目が合ってしまい、心臓が止まるかと思った。
ゆっくり近づいてくる大坪さんの気配に合わせ、俺の身体にまとわりついていた宮地さんの手がゆっくりと引き抜かれる。
「――っ」
「どうかしたのか、高尾」
「な、なん……でも、ないっす。だい、じょうぶだから」
なんとか息を整えて答えたけれど、なんにも無いようには聞こえなかったかも。
額に滲む汗や荒く吐く息に気付かれてしまうんじゃないかと、緊張してしまう。
「だが、顔が少し赤いようだ」
心配そうに顔を覗き込んでくる大坪さんの言葉に反応し、真ちゃんも顔を上げて俺の方に視線を向けてくる。
「だ、大丈夫っす! 俺今日着込んでるから、結構暑いなぁって! きっと、そのせいっすよ! あは、あはははっ」
笑って誤魔化す俺の横で、宮地さんがクックックと肩を震わせているのがわかった。
くそっ。なんか超悔しいっ!
なんとか大坪さんと真ちゃんの視線をやり過ごし、ホッとしたのも束の間。すぐさま宮地さんの指先が戻ってきて太ももをいやらしい手つきで撫でられた。
「ふ……っく」
きわどいギリギリのラインを指先が辿り、ズボンのホックが外される。
「ぁ、や……っやめっ」
「静かにしろよ。こんなところ誰かにバレたら困るのお前だぞ?」
「クソッ……マジでいい性格っ」
ありったけの敵意を込めて睨んでみたけど、こんな間抜けな姿じゃ迫力も何もあったもんじゃない。
「そりゃどーも」と、にっこり受け流がし、宮地さんの恐ろしいまでに性的な意味を含んだ指先がズボンのチャックの上で行ったり来たりを繰り返す。
もどかしくておかしくなりそうで、奥歯をギュッと噛み締めた。
どうしよう。ここは図書室で部活の先輩や真ちゃんがいるのに……。
心臓がマジでヤバイ。痛いくらいに鳴っていてじわりと嫌な汗が背筋を伝う。
これ以上触られたら俺マジで――。