No title
ほぼ定刻どうりに集合した誠凛バスケ部は、取り敢えず眠っている体を起こすために軽い準備運動を行っていた。
日向は伊月と組むつもりだったのだが、今日はどうやら先客がいるらしい。
「伊月〜、一緒に柔軟やろう♪」
そう言って、小金井が伊月の背中に伸し掛るのが見えた。
「え? オレはいいけど、コガ……水戸部は?」
「水戸部、今日はつっちーとやりたいんだって」
「へぇ、土田と……珍しいな」
「たまにはいいじゃん?」
にゃはっと屈託なく笑う小金井につられて、「それもそうだな」と、伊月も笑う。
その様子を、なんとなくモヤモヤした気分で日向は見ていた。
去年からずっと一緒に頑張ってきた仲間同士部員たちの交友関係は頗る良好だ。
伊月が小金井を友達としてしか見ていない事も、小金井が伊月にそういう意味で興味がないことももちろんわかっている。
だが、自分以外の人間と話をしているのが、面白くない。
「日向、一人か? ちょうどよかった。俺と組もうぜ」
「ゲッ、木吉……」
睨みつけるように二人を見ていたら、ふと声をかけられた。ニコニコと近づいて来たのは、相変わらず読めない表情をした木吉だ。
「どうせ相手がいないんだろう?」
と、言われてしまえばそうだと認めざるを得ない。
「チッ、仕方ねぇから組んでやる」
「本当は嬉しいくせに」
「嬉しかねぇよ! だあほっ!」
「俺は日向と組めて嬉しいぞ」
「……っ!」
嬉しそうに背中へと回る木吉の存在に思わず絶句。
なんでそう恥ずかしい事を平気で言えるんだと面食らってしまった。
すると――。