No title
「あ〜、やべ。腰痛て〜……」
夕方、辺りが暗くなってから高尾は自宅へと戻ってきた。
腰の鈍い痛みが先ほどの行為を思い出させ、カァッと頬が熱くなる。
(縛られて感じまくるとか俺、一体どーなってんだよ!? もしかしてソッチの気でもあんのか?)
いつも以上に感じてしまった自分が恥ずかしいやら、情けないやら。
ドアノブに手をついて盛大な溜息が洩れた。
「お兄ちゃん、何やってるの? そんなところで」
「うぉっ!?」
突然、後ろから声を掛けられてびくりと大きく身体が跳ねた。その拍子に下肢が引き攣り、拭いきれていない体液が太腿を伝ったような気がして、背中に嫌な汗が滲んだ。
「な、なんでもないって! ちょっと考え事! ただいま〜!」
出来るだけ平静を装い、慌てて中に入るとカバンを玄関に放り投げたままトイレに走る。
リビングの脇を通り抜けようとして、ふと足を止めた。
丁度テレビでは夕方の情報番組が流れており、ネットオークション詐欺で男が逮捕されたというニュースが放送されているところだった。
「あ、コレ友達のお兄ちゃんが騙されたって言ってたよ」
後ろから歩いてきた妹が、ひょっこりと顔を覗かせる。
逮捕された男は、自分で作った偽物を某アイドルグループのプロモーションビデオで使用したと嘘をつき、偽造した鑑定書を添えて売りつけると言う行為を繰り返していたらしい。
アイドルオタク達の心理を利用した犯罪行為で、100万以上を荒稼ぎしていたのだとアナウンサーが伝えている。
(なんでぇ、やっぱ先輩のアレ偽物だったんじゃねぇか)
何処からどうみても、作りが甘すぎたし、あんなものが1万円もするわけがないと思っていた。
(って、事は俺……ヤられ損じゃないか!?)
「うわぁあああ、最悪っ!」
恥ずかしいあれやこれやが脳裏を掠め、思わず絶叫。
今日の出来事は一体なんだったのかと、盛大な溜息を吐いた
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