No title
「ひぃいっ、宮地さん! マジすんません、俺聞くつもりじゃ無かったんです! たまたま通りかかって……」
「嘘吐け。オレの後ついて来てたくせに」
耳元で低く囁かれ反射的に身体が震えた。宮地先輩には全部お見通しだったらしい。
「……っ、あはは、バレてたんっすね」
「バレバレだっつーの。これはお仕置きが必要だな」
引き攣り笑いを浮かべるしかない俺の頬を宮地さんの指先が悪戯に撫でおろした。艶かしい仕草にぞくんと怪しい震えが背筋を駆ける。
「や、お仕置きとかいらないんで! マジそれだけは勘弁っ」
「さて、どうすっかな」
色気を含んだ声で囁きながら耳に息を吹きかけられてゾクっと背筋が粟立った。思わず上擦った声を上げてしまいそうになり腕の中で身を捩る。
「……高尾」
「な、なんっすか。耳元でしゃべら、ないでくださいッ」
「お前って、美味そうな耳してるよな」
「ちょ、やめ……宮地さんっ誰か来たら……」
慌てて身体を離そうと腕の中でもがく俺を見て、宮地さんは馬鹿にしたように鼻で嗤った。
「ククッ、バーカ。冗談だっつーの。いくらなんでも学校じゃヤらねぇよ」
ククッと可笑しそうに肩を震わせ俺の頭をくしゃくしゃっとき回す。
「――っ」
もしかしなくても、からかわれた?
心臓がまだバクバク言っている。囁かれた耳が熱い。
たったアレだけで身体が反応してしまった自分がすげー恥ずかしい。
「〜〜〜っ、悪趣味だ……」
「あン? なんか言ったか?」
ぼそりと呟いた俺の言葉に反応して、宮地さんの声に凄みが増した。
「い、いやっなんでもないっす」
ぶんぶんと首を振り、俯くことしか出来ないでいると頭上で宮地さんがくすっと笑った。
「まぁいい。今日はこれくらいで勘弁してやるよ。それより緑間は? 一緒じゃねぇのか?」
頭をポンポンと叩かれ、少しむっとなる。二歳しか違わねぇのにガキ扱いとかどうなの?って思ったけど、宮地さんには敵わないから、敢えて文句を言うのはやめておく。
「アイツなら、おは朝の占いが最悪だったとかで今日のラッキーナンバー分シュート打ってからさっさと帰りました」
溜息交じりにそういうと、「薄情な奴だな緑間も」と、宮地さんは呆れた声を上げた。