No title

家に帰ってすぐ、自分の母親に伊月が泊まる事を説明した。こちらは本人を直接連れてきてしまったと言う事もあり、あっさりとOKが貰えて日向はホッと息を吐く。

反対されても困るけれど、こうも無警戒に「俊君、久しぶりね〜」なんて歓迎ムード漂わせられたら、色々と罪悪感が湧いて来てしまう。

それから二人は日向ママが用意してくれた夕飯を二人で並んで食べ、順番に風呂に入り暫くリビングで日向ママと世間話をしてから日向の部屋に行った。

「――は〜、も〜母さんの話なげー……」

自分の机にかばんを置いて、うーんと伸びをしながら日向はうんざりと呟いた。

本当は直ぐにでも部屋に行きたかったのに、日向が風呂に入っている間に伊月が捕まってしまい永遠と話し相手をさせられていたのがそもそもの原因だ。

「いいお母さんじゃないか。オレのダジャレも喜んでくれたし」

「それは、喜んでたって言うより生暖かい目で見てたの間違いだろ」

最近出したばかりの炬燵に潜り込んだ伊月は、「その言い方酷くないか?」と、笑いながら側に置いてあったリモコンに手を伸ばした。

当たり前のようにテレビを付け、寝転がる伊月の横に腰かけて日向は呆れたように息を吐く。

せっかく二人っきりになれたのにいきなり寛ぎモードかよ。

自分と伊月の間に気持ちにズレが生じているようでなんとなく面白くない。

日向の苛立ちに伊月は気付いていないようで、大好きなお笑い番組を見ながらケラケラと楽しそうに笑っている。

笑う姿に悪い気はしないけれど、今はテレビより自分を見てほしい。

手に握っていたリモコンを奪い取りテレビを消すと伊月は「あっ」と小さく声を上げた。

「ちょ、なんで消す――……っ」

抗議をしようと顔を上げた伊月の顎を掴んで強引にキスをする。

彼の目が大きく見開かれ肩が盛大に跳ねた。

「テレビじゃなくて、俺を見ろよ」

「――っ」

口をへの字に曲げながら面白くなさそうに呟いて、ほんの少し割り開いた隙間に舌を差し込んだ。腕を押さえつけ、首を振って逃げようとする唇を追いかけ深く口付ける。

「ん、ふ……っ」

伊月の舌を強く吸い自分の口へ誘い込むと、鼻から抜けるような甘い声が洩れてきた。
息継ぎの合間にほぅっと感嘆の溜息を吐く。

上気した頬や、熱っぽく潤んだ瞳にくらくらする。


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