No title

重い足取りで何時もの場所へ辿りつき、深い溜息を一つ吐くとゆっくりとドアを開けた。
中にはいつもの3人の他に数人の男たちがニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて立っている。
「これは……どういうことだよ!?」
3人を相手にするだけでも屈辱的なのに明らかに人数が増えている。
「楽しい時間は大勢で共有した方がいいだろ? つまり、そう言う事だ」
主犯格の男が下品な笑みを浮かべたまま恐ろしい事を口走り目の前が一気に暗くなった。
こんな大勢に嬲られたら身も心も壊れてしまう。
入口で立ち尽くしていた高尾の腕を強引に掴んで部屋に引きずり込む。
「お前があまりにも遅せーから俺たち待ちくたびれてんだ」
一人の男が背後から高尾を抱えるようにして、高尾の両手首を掴んで背中へ捻りあげる。
両足をそれぞれ別の男に固定されあっという間に身動きもままならない状態になった。
「ほら、咥えろよ。好きなんだろう? どれがいいか選ばせてやるよ」
ずいっと複数のペニスが目前に接近した。室内はすでに濃厚な雄の匂いが充満していて息苦しい。
どれもこれも無い。どれも嫌に決まっているし、喜んで咥えた事実も無い。
だが、此処は一番奥に設置されている夜の部室棟だ。
普段から人気がない場所に誰か助けに来てくれるはずも無い。
さっきまで一緒だった宮地に決別してきたのだから、彼が来てくれるはずも無い。
「どうせならコレ、リアルタイムで動画配信してやろうか。アクセス数跳ね上がるんじゃねぇ?」
誰かがそんな恐ろしい事を口走りカメラを構える。
周囲の異様な盛り上がりに、高尾の心は冷たく凍り付いて行くばかりだ。
半ば自暴自棄になってぎゅっと目を瞑ると心の中に宮地が浮かんだ。
宮地との幸せだった日常が脳裏に浮かんできて思いが競り上がって来る。
一向に口を開ける気配のない高尾に痺れを切らしたのか一番近くに居た一人が半ば強引に口の中へと男根を捻じ込んできた。半分芯を持った熱がピクリと動いておぞましさに吐き気が込み上げてきた。
「ほら、もっと奥まで咥えろよ」
強引に頭を掴まれて喉奥まで呑み込まされる。
あまりの気持ち悪さに反射的に身体を捩って頭を引いた。
「やっぱり、嫌だっ!」
「はぁ? 今更何言ってんだよ高尾。じゃぁ、あの画像学校中にバラしてもいいのか?」
「クッ! それは……ッ」
「お前の大好きな宮地先輩の進路がどうなってもいいのかよ?」
「…………」
それを言われてしまえばぐうの音も出ない。
「お前は大人しく俺らに犯されてりゃいいんだ」
へへっといやらしい笑いを浮かべ、冷酷な言葉が降り注ぐ。
突き付けられた冷たい言葉に目の前がさらに暗くなったような気がした。
自分は高校を卒業するまでずっとこんな生活を強いられるのかと思うと気が遠くなる。
ガンッ!

突然、遠のいていく意識を引き戻すような大きな音が響き渡った。
周囲の視線が一斉にそちらへと注がれる。
「俺の進路が……なんだって?」
「み、宮地先輩!?」
男たちは入って来た人物を見て顔色を変え、本能的に数歩後ずさった。
「何やってんだ、お前ら……」
「あのですね、これは、その……ぎゃっ……!」
宮地は部屋の中央に居る高尾の姿を確認するとぞっとするような暗い笑みを浮かべながらおもむろに一番近くに居た男の腹を蹴り上げた。
男の身体が二つ折りになって崩れる。
「俺のモンに手ぇ出すとはいい度胸だな、そんなに轢かれたいか」
顔は笑顔だが、目が笑っていない。全身から立ち上る殺気がその怒りを雄弁に語っている。
「ひぃっ……すみませっ……ぐほ、っ!」
蹲る男の頭をガッと踏みつけて顔を床に叩きつける。男はビクリと大きく身体を震わせると、そのまま弛緩した。
どうやら気を失ってしまったらしい。
宮地が室内をギロリと睨み付けると、主犯格の男が慌てて高尾を差し出すように背後に回った。 高尾の肩に置かれた手がガクガクと震えている。
「や、マジですみません……ホント、軽い冗談のつもりで……ひぃっ!」
「冗談? へぇお前は冗談で野郎の口にチンコ突っ込むのか?」
伸びて来た腕に自分も殴られると思ったのか男が身体を縮こまらせる。
だが、宮地は高尾を男の手から奪うように引っ張り上げ、そのまま抱きしめた。
「ハン、お前なんか殴らねぇよ。俺の手が腐る」
自分の側で固い宮地の声が響く。全身を包み込む熱に、あぁ、これは夢じゃないんだとようやく実感が沸いた。
「コイツは俺のモンだ。今度こんな事しやがったら全員コンクリに詰めて海に投げ飛ばすからな! わかったか!」
当然、そんな事をすれば犯罪になる。だが、今の宮地にはやりかねないような雰囲気が漂っていたのだろう。
男たちは血の気の引いた顔で一斉にコクコクと頷いた。


[prev next]

[bkm] [表紙]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -