No title

(高尾SIDE)

「……ふ…っ、ん……」
静かな室内にぴちゃぴちゃと濡れた音が響く。
吐息と共に溢れる唾液が顎に滴って冷たい。
口腔内に収まりきらないくらいに体積を増したソレは逞しく反り返って先端から体液を滲ませている。
尖らせた舌を鈴口へと捻じ込むように舐め、唇を窄めて張り出しを刺激しながら音を立てて吸い上げる。
届かない部分は手で扱きながら刺激を与えていると頭上で、ため息のような喘ぎが洩れた。
もしかしたら、兄である清志よりも少し大きいのかもしれない。それに太くて熱い……。
もし、こんな凶器のようなモノで激しく突かれたら自分はどうなってしまうのだろう?
淫らに喘ぐ自分を想像し、慌てて不埒な妄想を否定する。
この行為は裕也に強要されているだけで、自分から進んで咥えているわけではない。
断じて好きでしているわけではないんだと、何度も何度も自分に言い聞かせた。
でも……。
じゅぶじゅぶと響く水音が耳を犯し、思考は過激な妄想を描き始めた。
「……たまんねぇな。コレ」
「ふ、ぇ……っ!?」
夢中でしゃぶっているといきなり肩を掴まれて引き剥がされ、抱き込まれた。
体勢を入れ替えられてロッカーに背を押し付けられる。あっという間にズボンがずり下げられ足の間に裕也の膝が割り込んできた。
片足を掬い上げられ、膝の裏に腕を差し込まれて持ち上げられる。
不安定な体勢を取らされ、慌てて裕也にしがみついた。
「ちょ、宮地さ……何するんっすか?」
こんなことをこの状況で聞くなんて野暮かもしれないとは思った。
咥えるだけって話だったのにまさか最後までされてしまうんじゃ……。
「ごちゃごちゃうるせぇよタコ! 一緒に気持ちよくしてやるだけだ」
ロッカーと裕也に挟まれた窮屈な体勢のまま、すっかり勃ち上がってしまっていた高尾の熱に裕也の手が触れた。
「ハハッ、咥えただけでお勃ててんだもんな。クソ生意気なツラしてるくせに淫乱だなオマエ」
「っ、や……ぁッ」
ガチガチに昂っていた裕也のものと一緒に握り込まれ息が詰まる。
器用に強弱をつけて握り込まれれば、ゾクゾクするような甘い痺れが駆けあがって来る。
最近清志の方も忙しく、お互いに会えない日々が続いていたせいもあるかもしれない。
自分でするのとは比べ物にならない激しい快感が沸き起こり無意識のうちに腰が揺れる。
「やめ……っ、ぁっ、や、だって……ぅんんっ」
「ヤダヤダ言ってる割に気持ちよさそうにケツ振ってんじゃねぇか。本当はコッチに挿れて欲しいんじゃねぇの?」
くくっと喉で笑われてカァッと頬が熱くなった。
「ち、ちがっ」
ほんの一瞬、裕也の動きが止まった。ジッと見下ろされているのがわかるから恥ずかしすぎて顔を上げることは出来ない。
「……ふぅん。ま、今回はコレだけで我慢しといてやるよ」
頭上で何か呟いたと思ったらいきなり扱くスピードを上げられた。
高まっていく快感に膝が笑って、立っていられなくなりそうになり慌てて裕也のシャツにしがみついた。
掴んだシャツから清志と同じ柔軟剤の香りがして、胸が苦しい。鼻腔を擽る香りに宮地に抱かれているような錯覚を覚え軽い眩暈を覚えた。
繰り返し、長い指がリズムを刻み、互いの体液が混ざり合ってくちゅくちゅと卑猥な音が響き、余計に快感を煽られた。
コレは清志を裏切る行為だと頭ではわかっているのに、止められない。
「は、ぁあっんんっ……宮地さ……ぁっ、やっべ、どうしよ……気持ちいい……」
背徳と快楽の合間で揺れる心は複雑で、縋る様に裕也を見上げた。
「いいんじゃね? 今は何もかも忘れて溺れちまえよ」
全部、俺のせいにすればいいじゃねぇか。と、自嘲めいた呟きにハッとして顔を上げた瞬間、唇を奪われた。
噛み付くようなキスをしながら手の動きはさらに激しさを増し高みへと追いつめてゆく。
ぬめる体液が触れ合う部分を溶かし、同じ快感を味わっているのだと感じさせられる。
熱くて、熱くて腰がぐずぐずに溶かされてしまいそうだ。
「あっ、やっ、宮地さ、あっあっ、も……でるっ……あっ、あ、ぁあ……ッ!」
「……クッ」
タイミングを合わせたように同時に終わりを迎えた。
脱力して腰を落としそうになったのを裕也が支えてくれる。
「……大丈夫か?」
汚れていない方の手で頭を撫でられずきずきと胸が痛んだ。
「へーきっす。それより、約束守って下さいよ?」
「お、ぉお。約束、だからな」
へらりと笑ってみせると、裕也の方が戸惑ったような表情を見せた。
「ねぇ、宮地さん……今夜の事は……」
「誰にも言わねぇって。それに、一回きりだ。まぁ、お前がどうしても抱いて欲しいって言うなら考えてやってもいいぜ?」
「!」
とんでもない事を言われブンブンと首を振った。
そのリアクションを最初から想像していたのか裕也がククッと喉で笑う。
「オラ! いつまでんな恰好で休んでんだ! 早く着替えろ!」
足蹴にされ、慌てて衣服を整える。早くしろよと言いつつ待っていてくれる姿が清志とそっくりで、兄弟はこんな所も似るのか? と、思わず失笑が洩れた。
「何笑ってんだよ。きめぇわ」
「うっわ、ひっでー」
今夜の事は事故にあったとでも思って忘れてしまおう。 
二人だけの秘密だと裕也も言っていたし、きっと大丈夫。 高尾は笑顔の裏で何度もそう言い聞かせた。


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