No title

枕で顔を覆い、少しでも声が洩れてしまわないように。
突き上げられるたびに、あられもない声を上げてしまいそうになり、ビクビクと身体が震える。
「い、づ、き。顔、隠すなって」
「やっ、嫌だっ」
「……たく、相変わらず強情だな」
小さなため息が聞こえたかと思ったら、いきなり身体をぐっと倒して来た。
「なぁ、気持ちよくねぇの?」
耳元に息を吹きかけられるように囁かれ、俺はフルフルと首を振った。
気持ちよくなかったら、こんなに何度も身体を合わせる事なんてしない。
「じゃぁ、なんでいつもそうやってんだよ」
「っ、は……恥ずかしいからって、いつも言ってるだろっ、ぁっんんッ」
「お前の感じてる顔なんて何べんも見てるっつーの」
リズムよく突き上げながら熱い舌に耳たぶを食まれ、同時に胸を指で弄られてゾクゾクするような甘い痺れが腰にクる。
「ん、ふっ……ッぁあっ日向、それヤだ……ぁッ」
そんないっぺんにされたら、俺、わけがわからなくなってしまう。
「や……ッ、やぁ、あ……ッ」
俺の力が入らなくなったタイミングで枕を奪い取られた。
目の前に日向の顔があって、眼鏡越しにジッと見下ろされていると思うと堪らない羞恥心に襲われる。
慌てて手で隠そうとしたけれど腕を掴まれシーツに縫い付けられた。
「や、んんっ、ふ……っ」
「声、我慢すんなって。もっと聞かせろ」
「っ、だ、だめ……ッは、ぅんんっ」
唐突に耳を舐められた。耳の中に熱い舌が潜り込んできてチュクチュクといやらしい水音がダイレクトに響く。
「ぁ、は、ぁ……ッ、んんッ〜〜〜〜ッ」
顔を振って逃げようとしても追いかけて来て執拗に耳を責められ、ナカを掻きまわすように熱い塊が一番奥をぐりぐりと擦る。先端がイイ所を掠るたびに抗いようのない強い快感に襲われてびくびくと内腿が引きつった。
「や、そこっ、だめ……ああっ日向、も、も……う……ッ」
「イきたいか?」
「…………ッ」
「なぁ、イきたいって言えよ」
限界が近いのを察した日向が、射精を促すように俺のを握り込む。
「あっ、や……ッ」
完璧に覚えられてしまっている快感のポイントを、突き上げるのと同じタイミングで扱かれて目の前で星が瞬いた。
もう、ダメだ。こんな風にされたら我慢なんて出来るわけが無い。
「やっ、も……っ、イく、――ぁあっい、く……ッ!」
じりじりと焼けるような熱い視線を感じながら、白濁を放った。その間も途切れずに揺らされて下半身が痙攣するようにひくひくと震える。
少し遅れて、低くクッと息を詰める気配があってナカに熱いモノが広がっていく。



「なぁ、どうしていつも意地悪な事ばっか言うんだよ」
ベッドに並んで横になりながら、前から聞きたかった事を思い切って訊ねた。
「何のことだ?」
「……だから、その……いつも、意地悪な事ばっか言うだろ?……なんでだろう? って思って」
言いながら恥ずかしくなって、ベッドに突っ伏した。気配で日向がクスっと小さく笑ったような気がする。
「そりゃお前、男のロマンってやつだよ」
「ろま、ん???」
想像していなかった言葉が飛び出して、思わず顔を上げた。
「自分が組み敷いてる奴に、”挿れて”とか、”イかせて”とか言わせたいだろ。つか、言えよ」
「ヤだよそんなの。俺は絶対言わない」
前々から日向は馬鹿だとは思ってたけど、そんな事言わせたいだなんてどうかしてる。
野郎にそんな事言わせて何が面白いんだか。
「つか、そのうち絶対に言わせてやる!」
「だから、言わないって」
そんな恥ずかしいセリフ、口が裂けても言えるわけが無い。
「伊月は突っ込まれる側だからわかんねぇんだよ。この破壊力が」
想像するだけでも堪らないとかなんとか言ってニヤニヤいやらしい笑みを浮かべている日向の言動にカチンときた。
起き上がって、日向の上に跨る。
「へぇ〜……じゃぁ、突っ込ませてくれるんだ、日向が」
「はっ? おまっ、何言って……」
「突っ込んでみたらその気持ちわかるんだろう?」
そっと頬を撫でて顔を近づけるとサーっと日向の血の気が引いて行くのが見て取れた。
「丁度、今日は誕生日だし、俺のお願い聞いてくれるよな?」
「や、伊月おち、落ち着けって!」
焦る日向の顔がなんとも可笑しくて、堪えていても込み上げて来る笑いは我慢出来そうにない。
「ぷ、あはははっ日向の顔、変……っ」
「くっそ伊月てめっ! 一瞬マジで掘られるかと思ったじゃねぇか!」
「日向が言ったんだろ? 自分で蒔いた種」
そう言ったら、グッと言葉に詰まった。
「俺は別に、突っ込む方でも良かったんだけど……」
「えっ!?」
「なぁんて。冗談言うのも愛情だん! ってね」
「伊月黙れ! 心臓に悪い冗談は止めろ」
ぐりぐりと全然痛くないヘッドロックをかまされてベッドに再び沈む。
日向が言う男のロマンは、俺にはわからない。
いつかわかる時がくるんだろうか?

でも、俺は言わないけどな!!


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