No title

それから、一人じゃ食べきれない量のコーヒーゼリーを皆とシェアして食べ、家で母さん達が作ってくれたご馳走とケーキを食べ、大満足で部屋に戻って来ていた。
勿論、日向も一緒だ。
「あー、久々食い過ぎた」
「俺も。もうお腹パンパンだよ。――パンパン……パンを食べてお腹パンパン! キタコレッ」
「伊月うるせぇ」
気の抜けた日向のツッコミに思わず苦笑が洩れる。こうやって肩を並べて座っている事自体久々で、なんだか凄くくすぐったい。
「にしても、ホント驚いたよ。まさか日向があんな事考えてくれてたなんて」
「たまにはいいかと思っただけだ」
なんて言いながら、人の部屋のテレビを勝手に付け始める。そっと寄りかかると、するりと腰に腕が回って来た。
久々に感じる日向の温もりや存在感が心地いい。
「でも、どうせなら旅行とかの方が良かったな。伊豆旅行でサプライズってね。キタコレっ!」
「ダアホ! んな金も時間もねぇだろうが。でもまぁ、伊月が喜んでくれて良かったっつーか。部活始まる前は訳わかんねぇ事言って怒ってたから正直焦ったわ。つか、お前身体だけが目的だとか言ってたろ」
「だってあれは……ッ」
小さなため息交じりに言われて言葉に詰まる。結果的に全部俺の勘違いだったわけだけれどそもそもの原因は一週間前のアレだし。
「日向が悪いんだからな!」
「はぁっ!? なんでオレなんだよ?」
意味がわからない! とばかりに目を丸くする日向に一旦収まっていた心のモヤモヤが再びせり上がって来る。
「だってそうだろ? 日向は忘れてるかもしれないけど、俺にとっては凄く辛かったんだから」
「だから、何の話だっつ〜の!」
「この間のアレだよ」
「アレ? この間?」
俺が言っているモノが本気でわからないのか、日向が首を傾げる。
「アレ、じゃわかんねぇよ。つかドレだよ」
「……ッ、だ、だから……この間の部活の後の……」
自分からは言い出しにくくて、つい、顔が赤くなってしまう。熱くなった頬を隠そうと顔を背けたかったけれど、日向が許してくれなかった。
俺の頬を両手で挟み、逃げられないように固定されてマジマジと顔を覗き込んでくるから、堪らず視線が泳いだ。
「部活後って……?」
「この間、途中で放置プレイしただろっ!」
「…………!」
ようやく思い出したらしい日向が、そういやそんな事もあったな。なんて、他人事のように呟いた。その態度にカチンと来て拗ねたような声が出た。俺がどれだけ不安だったのか本当にわかってなかったなんて!
「結局あの後日向戻って来なかったし……2,3日経ったら俺の事避け始めるしで、凄く悩んだんだからな!」
「あーいや、確かにアレはやり過ぎたとは思ったんだけどな……つか、あの後お前オナってたろ? 出て行った手前すっげー入り辛くてよ。結局便所行って戻って来た時には伊月と入れ替わりになっちまって」
「っ! き、聞いてたのかよ! バカッ」
「馬鹿って、息遣いとかで大体わかんだろうが」
「〜〜〜〜ッ」
まさか聞かれてたなんて! ほんっと最悪だ。
「成る程な、それで身体だけの関係……かよ。確かにその後すれ違ってたしな。まぁ、なんだ……悪かったな伊月」
日向は頭を掻いて、フォローが足りなかったと真摯に謝ってくれた。俺も、意地を張っていたのが悪かったんだしお互いさまと言えばお互い様だ。
「俺、この一週間ずっと不安だったんだからな」
「あぁ」
「もしかしたら愛想尽かされちゃったんじゃないかとか、俺の事あきたんじゃないかとかいっぱい考えてダジャレも思いつかないくらいだったんだぞ」
もう、止めなくちゃいけない。これ以上言ったって、お互い嫌な気分にしかならない。わかっているのに今まで溜っていた言葉が次から次へと口を吐く。
「ダジャレはどうでもよくねぇか?」
「ひどっ……ん、んんっ」
文句を言おうと口を開いた途端、強く抱きしめられて唇を塞がれた。口の中に日向の熱い舌が入り込んできてお互いの唾液が混ざりあい小さな水音が部屋に響く。
「不安にしちまった分は、キッチリ責任取ってやるよ」
言いながらラグの上に押し倒されて視線が絡む。熱を孕んだ言葉に、どきりと胸が高鳴った。
「ま、待てって! まだ母さんたち下で起きてるし誰か来たら……」
「伊月が声我慢すればいいだけの話だろ?」
「そういう問題じゃ……ッんんっ」
日向の吐息が耳にかかる。耳を舐められてゾクゾクとした痺れが腰にクる。
「そん時はそん時だって。 つか、こんなに乳首おっ勃てて、今更イヤとかねえよな?」
ひやりとした手がシャツの中に滑り込み、既に硬く尖り始めた胸をきゅっと摘まむ。首筋や鎖骨に舌を這わされ、胸を弄られると堪らなく腰が甘く疼いて息が上がってしまう。
「ちょ、は、ぁっ……、んん……っ」
シャツを捲りあげ露わになった胸元に舌が絡みついて来た。熱い唇に吸い付かれるたびにじわじわと快感が沸き起こって、声を洩らしてしまいそうになる。
「此処も、すげぇガチガチじゃねぇか」
形を確かめるように膝で股間をぐりぐりと押され、恥ずかしい指摘に息が詰まった。
「……なぁ、伊月。お前はどうしたいんだ?」
「えっ」
突然の質問に驚いて視線を上げた。いつになく真剣な眼差しが俺を真っ直ぐに見下ろしている。
自分だって興奮してるくせに今更何を。
「伊月がヤリたくねぇってんなら止める」
「……ッ止める気なんて、ないだろ?」
「伊月が本気で嫌だっつーんならヤんねぇよ。別にお前の身体が目的で付き合ってるわけじゃねぇし」
俺が言った事気にしてたんだ……。
ぶっきらぼうに言いながらそっと頬に触れる。
「誕生日くらい、優しくしてやんねぇとな」
なんて言いながら改めて抱きしめられた。ちゅ、ちゅっと啄むようなキスがくすぐったくてもどかしい。
「日向だってそのままじゃ辛いくせに」
「俺か? あー、オレなら大丈夫だ。ぶっちゃけお前のエロい顔想像しただけでヌけるし」
「……っ、バカ」
俺がどうしたいか、なんて決まってるじゃないか。
返事の代わりに、日向の背に腕を回し自分からそっと口づけた。


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