No title

静かな部室に二人きり。ただし、今日は日向とじゃなくて黒子とだ。
備え付けの簡易ベンチに並んで腰を下ろし、どう話を切り出そうか俺は悩んでいた。
「聞きたいことってなんでしょうか?」
「実はさ、二人はヤる時どんな風にシてるのかなって」
「…………」
うん、見なくてもわかる。黒子がドン引きしている!
一番触れて欲しくない話題だもんな。けど、聞かなきゃ俺も前に進めそうにないから。
「どんな風、と言われても……普通だと思いますが」
「だよな、普通が一番だ。って、言うか普通でいいんだよ」
「え、キャプテンはアブノーマルなプレイがお好みなんですか?」
「ち、ちがっ! 誤解の無いように言っておくけど、SMとかじゃないからな!」
日向にもしそういう気があったら、流石に俺だってついて行けない。
って、そうじゃなくて!
「た、例えば……恥ずかしい言葉とか、言わされたり……とか、そういうのってどう、なんだ?」
言いながら思い出して、恥ずかしくなってしまった。語尾がどんどん小さくなっていってしまったのは仕方がない。
勘のいい黒子は俺が何を言わんとするのかわかってくれたようでふぅ、と小さく嘆息するとベンチに一度座りなおした。
「そうですね。言葉攻めは無いとは言いませんが」
「黒子は、言っちゃったりするのか?」
「…………」
思わず顔を見たら、軽く引いていた。黒子とこんな話をするのは初めてだし無理もないだろう。
「俺さ、どうしても言えないんだよ」
「…………」
「だって、恥ずかしいだろ? いくら心を許してても、それだけはどうしても無理って言うか。そこまで自分を失う事が出来ないって言うか……」
「それで、喧嘩したんですか?」
「喧嘩の方がまだましかなーって。あまりにも俺が頑固だったから、寸止めされて強制終了。結局、それっきりでさ……気まずいし、どうしたらいいのかわからなくて」
黒子が小さく「ぅわ」と、呟くのを俺は確かに聞いた。
「ぶっちゃけ、どうしたらいいと思う?」
「それって、最近の話ですか?」
「丁度一週間くらい前、かな。あの日以来日向に避けられてるし、気まずいから俺も声掛けづらいしで悪循環なんだ」
「一週間! 長いですね」
「だろ?」
「思い切って伊月先輩から歩み寄ってみたらどうです? 言う、言わないは別として、なんにしてもきっかけがないと……長引けば長引くほど拗れてしまうような気がします」
「そう、だよな」
このままでいいわけ、無い。
「言い訳していいわけ? ハッ! 久々にキタコレっ!」
「……取り敢えず、頑張って下さい」
俺のダジャレは綺麗にスルーして、黒子はそそくさと立ち上がる。最後に拳を差し出して来たので、少し躊躇いつつコツンと拳を合わせた。
俺から歩み寄る……か……。出来るかな。
出来るか出来ないか、じゃない。やらなきゃダメだ。俺だって日向とこのままなんて嫌だし。
「よし、グダグダ考えても仕方ないし帰るか」
弱気になってしまいそうな自分に喝を入れ、鞄を掴んで部室を後にした。


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