No title

ってな事があってから一週間。日向との間には未だ気まずい雰囲気が漂っていた。
あの日以来、日向が俺を避けているのか、二人きりになる機会もほとんど無くなってしまった。
まぁ、最初の2日くらいは俺も怒ってたから無視したりもしたけど……。
だって、腹が立つじゃないか。散々人の体弄んでおいて放置だぞ?
怒らない方がどうかしてる。
だけど――。
「なぁ、ひゅ……」
「あー、悪い。オレ、木吉に用があっから!」
「あぁ、うん」
部活中は勿論、廊下ですれ違った時も、なんだかんだと理由を付けては俺を避けて何処かへ行ってしまう。
っていうか、木吉に何の用があるんだ。なんで、木吉なんだよ。
あの緩み切った木吉の表情を見ると、心にモヤモヤとした思いが広がっていく。
木吉と一緒に行動している日向の姿が視界に映り込むたびに気分が暗く沈んでしまう。
日向のやつ、あいつといるとイライラするとか言ってたクセに、随分楽しそうじゃないか……。
こんなのみっともないヤキモチだ。それはわかってる。
わかっているけれど……。
「――はぁ」
日向とまともに話も出来ないもどかしさに、思わず大きなため息が洩れた。
最近、気付くといつもあの日の事を考えている。
アレは、俺が悪かったのか? 本当に俺?
考えたって答えはでないし、あの時の状況を思い出すだけで胸を掻き毟りたいような衝動に駆られる。
お蔭で、最近はナイスなダジャレすら浮かんで来ない。
アレはどう考えたって日向が悪いだろう?
だって、あんな恥ずかしいセリフ、言えるわけがないじゃないか!
別に行為自体を拒否してたわけじゃないのに放置とか……酷すぎる。
「――百面相の練習、ですか?」
「へ、ぁっ!?」
悶々と堂々巡りを繰り返している所に突然、背後から声を掛けられ思わず素っ頓狂な声が洩れた。
振り返ると、つぶらな瞳がジッとこちらを見つめている。
「なんだ、黒子か……驚かすなよ」
「すみません、驚かせるつもりは無かったんですが……」
表情の読めない顔で頭を下げられ、肩の力を抜いた。
黒子が突然現れるのは何時もの事だ。だいぶ慣れたと言っても、驚くことの方が多い。
って、言うか百面相って。
「伊月先輩……キャプテンと何かあったんですか?」
「えっ?」
真っ直ぐ俺を見つめながら尋ねられて、どきりとした。
「そう、見える……よな」
「はい」
「ハハッ、即答かよ」
「まぁ、いつも一緒にいる伊月先輩が一人でいるのはどう考えても不自然ですし……練習の時もあまり連携がうまく行っていないような気がしたので」
「……ッ」
「喧嘩なら、早く仲直りした方がいいと思います」
それは、わかってる。わかってるんだけど……。俺をじっと見つめる瞳には、下手な言い訳や嘘は通じ無さそうな雰囲気が宿っている。
「あ〜……喧嘩、では無いんだけどな。ぶっちゃけ俺にもどうしたらいいのかわからないんだよ」
「……はぁ」
そう言えば、黒子は黄瀬か誰かと付き合っているって言ってたな。
もしかしたら、黒子にもこんな経験あるんだろうか? 
「…………」
「あの、僕の顔に何か付いてますか?」
「ん? あぁ、悪い。あのさ、少し聞いてもいいか?」
「はい、僕にわかる事なら」
「黄瀬と、最近上手く行ってるのか?」
黄瀬の名前を出した途端、黒子の目が大きく見開かれ、みるみるうちになんでそんな事を聞くんだと言わんばかりの表情へと変わってゆく。
「……質問の意味がわかりません」
「そう露骨に嫌そうな顔するなよ。俺を助けると思ってさ、後でお礼にマジバで好きなの奢ってやるから」
黒子は、怪訝そうな表情のまま暫く考えていたけれど、仕方がないなと言わんばかりに嘆息して、頷いた。


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