No title

「ん……ふ……ぁっ」
薄暗い部室に押し殺した吐息が響く。
口元を手で押さえてはいるけれど与えられる刺激が気持ちよくて、どうしても鼻から抜けるような声が洩れてしまう。
「伊月、手噛むな。痕が残るだろ」
「だ、だって……、無、無理っ」
耳元で囁かれる日向の声にすら身体は敏感に反応してしまい、俺はフルフルと首を振った。
だって、押さえてないと声、我慢出来そうにないし。もしも誰かが廊下を通ったりしたら……そんなの困る!
部活後の部室で日向とこんなことになっちゃってるなんて、知られたくない。
「んんッ……ふっ」
「無理って、なんでだよ。いつもそうやってっけど痛いのが好きなのか?」
「……ちがッそんなわけ、ひ、ぁあっ」
カリッと乳首を軽く齧られ、ピリッとした痛みに身体が跳ねた。思わず変な声をあげそうになって慌てて口を手で塞ぐ。好きなわけ、あるか!
そんな俺の姿をジッと見て日向が小さく笑った気がした。片方の手で、俺のを直に扱きながら胸や鎖骨に舌が絡みついて来る。敏感になった乳首を舐めたり吸われたりするとどうしようもない強い快感に襲われて、何度も腰が抜けてしまいそうになる。
崩れないようになんとか堪えているけれど膝がガクガクして立っていられそうにない。
ズルズルとロッカーに凭れるように腰を落とした俺を追って日向が床に膝をつく。
「伊月、胸弱いよな……耳も……なんか、すげーエロい」
「え、エロくないっ んんッ」
耳元に息を吹きかけるようにしながら、耳たぶを甘噛みされてゾクゾクするような甘い痺れが背筋を駆けた。首を振って逃げようとしたけれど追いかけて来て熱い舌に耳のナカを犯されクチュクチュっと言う卑猥な水音が鼓膜を伝う。
そんないっぺんに色々弄られたら、わけわかんなくなりそうになる。
「〜〜〜ッひ、日向ぁ、も……俺っ」
いやらしい手つきで腰を撫でながら「どうしたんだよ?」 なんて聞いて来る。
解っているくせに、日向はいつも意地悪だ。
俺が答えないでいると、早く言えよと言わんばかりに鈴口に爪を立てられた。先走りでぐしょぐしょになった所からクチクチと濡れた音が響いて余計に興奮を煽られる。
「や……っあっぁっホント、やめっ……」
「やめていいのか?」
「……ッ、バカっ」
止めて欲しいわけない。フルフルと首を振ったら日向が満足そうに笑い、扱くスピードを上げた。
「ぅ、やっ……は、ぁっ、あっ」
「なぁ、伊月……イきそう? イかせて欲しいって言ったらイかせてやってもいいぜ」
耳元でとんでもない事を甘く囁かれギョッとして思わず日向を見た。
そのタイミングでモノを強く握り込まれ息が詰まる。そんな恥ずかしいセリフ、言えるわけなじゃないか!
「んんっ、い、言わない……」
「なんでだよ! たく、相変わらず強情だな」
「う、五月蠅い馬鹿! そんな恥ずかしい事絶対言わないからな!」
「ふ〜ん……じゃぁ仕方ねぇな……よっと」
「ぅわっ!?」
じゃぁ、仕方がないなとばかりに溜息を一つ吐いたと思ったら突然腰を引き寄せられ、そのまま床に引き倒された。
腰を高く持ち上げられて無理な体制に身体が軋む。
「わ、ちょっ日向っ、何すんだよっ、こんな恰好嫌だって、やめっ」
「ごちゃごちゃうるせぇよ伊月。言わぬなら、言わせてやろうホトトギスってな」
「っ、ソレ絶対違うだろ馬鹿っ! 〜〜〜ッ」
言いながら、唾液で濡らした指を俺の尻に宛がう。指を挿入する瞬間をばっちり見てしまい、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。
そんな俺の気持ちなんてお構いなしに、突き入れた指でナカを刺激してくる。既に覚えられてしまった箇所をピンポイントで刺激され強烈な快感に目の前で星が瞬いた。
「や、ぁっああっダメ、そこっ」
「ダメじゃなくて気持ちいいだろ?」
「んんっ、ぁっ、ソコ、ソコっダメだって……や、ぁあっ」
もう、声を抑えるどころの話じゃない。ソコばかりを刺激されて一気に射精感が高まっていく。
既に覚えられてしまったポイントを押し上げられ、強い快感に涙が滲んだ。
「ホラ、言えよイかせて欲しいって。 言えば楽になるんだぞ」
「ッ、嫌だ。絶対言わな……ァアッ」
「…………はぁ。そうかよ……じゃぁ、もういいわ」
「!?」
深い溜息と共に、突然指が引き抜かれた。何が起こったのか状況がよくわからないけれど、俺から日向が離れていく気配がする。
「ひ、ひゅう、が……?」
「なんか萎えちまったし、もういいわ」
タオルで手を拭きながらそんな事を言い、ため息交じりに部屋を出て行こうとする。
「ちょっ、俺を置いていくのか?」
「……バーカ、便所だよ。伊月も早く帰り支度しろよ」
なんて言いながら髪をくしゃりと撫でて、苦笑しながら日向は出て行ってしまった。
「――ッ」
まさかの寸止めされて放置……。
「有り得ない……だろ……?」
なんでこうなってしまったのか、状況がよく読めない。
放心状態の自分の声が、虚しく部室に響いていた。


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