No title
「宮地さん、授業いいんっすか?」
一つずつシャツのボタンが外され露わになってゆく素肌にドキドキしながら、キスの合間に訊ねてみる。
「野暮な事聞いてんじゃねぇよ。このまま突っ込むぞコラ」
股の間に入れられた腰を押し付けられ布越しに裕也の熱を感じて思わず苦笑が洩れた。
「痛いのはカンベンっす」
「だったらくだらねぇ事言うな」
「へーい」
小さく笑いながらもう一度唇が触れ合う。言葉は酷いけれど触れる仕草や口付けは優しくて鼓動が少しずつ早くなっていく。
こういう所も兄弟って似るのかと新発見にドキドキしているとひやりとした手が胸元に伸びて来た。
「んっぁ」
胸の飾りを指で摘ままれ触れびくりと身体を震わせたその瞬間――。
「――なに、やってんだお前ら?」
「!!!!」
地を這うような低い声が裕也の背後から響き、間仕切り用カーテンの隙間から覗く、今一番会ってはならない人物の存在に高尾はヒィッと小さな悲鳴を上げた。
「み、みみみみ、宮地さ……っ」
「随分楽しそうな事してんじゃねぇか高尾」
冷たい笑いを張り付かせ、どういうことだ? と、ばかりにゆっくりと近づいてくる宮地。顔は笑っているが目や声色は全く笑っておらず全身の血の気が引いていく。
こんな状況を見られておいて言い訳もクソもあったものじゃない。
「あ、あのっ宮地さん、ご――」
「ああ、見ればわかんだろ? 今、すっげー盛り上がってるトコだから邪魔すんなよアニキ」
「ちょっ! 何言ってんっすか宮……っんんっ」
突然ぐいっと顎を掴まれて、唐突に深く口付けられた。避ける暇も無かった。歯の裏や頬の内側を舐められびっくりして声も出ない。
なんとか抜け出そうともがいてみるけれどシーツに両手を縫いとめられていて自由が利かない。
裕也の背後に居る宮地が怖くて顔を背けたかったけれど許してもらえず、逃げてもすぐに追いかけて来て熱い舌に絡めとられる。
「ん、ふ……ん、んんっ」
今、宮地がどんな顔でこっちを見ているのか。怖すぎてみることも出来ず、高尾はぎゅっと目を瞑った。
「裕也お前さ……なんでもかんでもおれのモン欲しがるのいい加減に止めろよ。ガキか」
「あぁ?」
呆れたような物言いに、裕也がピクリと反応を示す。
「たくっ、そういう所は昔から変わらねぇのな」
鼻で笑われ、裕也がようやく高尾の上から退いた。何が起きているのかよくわからないが、怖すぎて目を開ける勇気は出ない。
「他の物だったらある程度許してやってもいいけどな……コイツだけはやれねぇわ」
「!?」
突然強く抱きしめられた。驚いてそっと目を開けると目前に宮地の顔があって――。
「コイツはおれのモンだ。誰にも渡さねぇ」
「――ッ」
まさかの告白に息が止まりそうになった。普段好きだ好きだと言って迫るのは自分からで、宮地は仕方なく付き合ってくれているのだとばかり思っていた。
なのに、なんて軽薄な事をしてしまったんだろう。後悔の念がどっと押し寄せて来て宮地の腕に抱きしめられながら罪悪感が込み上げて来る。
「あぁ、そうかよ。じゃぁいいわ。なんか萎えたし……後は勝手によろしくやってろよ」
「……待てよ。誰が行っていいって言った?」
「ぅ、えっ!?」
低い声がその場を離れようとする裕也を呼び止める。それと同時にベルトのバックルを器用に外されシュルッッと小気味いい音を立ててズボンから引き抜かれた。
「オイタした悪い弟にはお仕置きしなきゃ……だろ?」
「はっ!? ざけんなアニキ! 何言ってんだ!」
ベッドから降りた宮地はあっさりと裕也を捕まえるとベルトで後ろ手に縛りつけた。
そして強引に二人が見える位置に座らせると、高尾の元へとゆっくり戻ってくる。
「あ、あの宮地……さん?」
「コイツさ〜、人に見られながらスんの大好きなんだよ。お前はソコで指咥えて見てろ」
「いやいやいや! 好きじゃねぇしっ」
「嘘吐け。こういうスリルがある場所大好きだろうがオマエ」
言うが早いかベッドが軋み後ろから抱きしめられるような形で宮地の股の間に無理やり座らされた。
裕也に見えるように股を思いっきり開かされ片方の手がズボンの中に入り込んで来る。
「や、やめっ宮地さっ……っ、ぅ」
先ほどの裕也の刺激で敏感になっていた胸元を摘まみながら、布越しに性器を掴まれ息が詰まる。
首筋や耳に舌を這わせながら二点を同時に責められてビクビクと体が震えた。
ただでさえ恥ずかしいのに、至近距離で大股開きで性器を弄られている姿を見られるなんて拷問以外の何物でもない。
あぁ、コレは自分への罰なんだと、唐突に理解した。
裕也は何とか自由を奪っているベルトを外そうとしながら罵詈雑言を言っているけれど宮地はお構いなしに態と煽るような触れ方をしてくるからタチが悪い。
「ん、ぁっふ……んんっ」
「腰、揺れてんぞ? 見られていつもより感じてんじゃん やっぱ変態だなオマエ」
「……っ」
違うと否定したかったけれど口を開くとあられもない声を出してしまいそうでフルフルと首を振る。
「違わねぇだろ。ココも、モノ欲しそうにして。簡単に入りそうじゃねぇ?」
「ぅ、あ……っ」
中途半端に下着を膝まで下ろされ、指がナカに入り込んで来る。
いくら態度で嫌だと言ってみても身体は正直だ。首筋に舌を這わせながら、片方の手で乳首を弄られぐちゅぐちゅとナカを掻き乱されてどうしようもなく身悶えてしまう。
どうしよう、裕也がいるのに……。
気配で裕也がゴクリと息を呑むのがわかった。裕也はいつの間にか口を閉ざし、宮地の腕の中で淫らに腰を揺らす高尾の姿を食い入るように見つめている。
その熱い視線で余計に快感が煽られ、強請る様に宮地を見上げた。
「宮地さん、オレ……も……」
「もう、なんだよ?」
「……ッ」
意地悪く言いながら腰を尻に押し付けて来る。熱く猛ったモノの熱を感じ顔がカァッと熱くなった。
「……ムカつくっ」
「んな顔で睨まれても煽ってるようにしか見えねぇっての。ホラ、言わなきゃわかんねぇよ」
「っ、ぁあッ」
グッと指が沈み込んできて、前立腺に触れる。それはほんの一瞬で、強い快感を身体に思い出させてから宮地はわざとそこをずらして周囲を刺激してくる。
「ほら、言えよ。どうして欲しいか」
「んっ、宮地さんの……早く、挿れて……」
「挿れてクダサイ、だろ?」
「……ッ」
早く言えよと言わんばかりに再び前立腺を刺激され息が詰まる。
恥ずかしすぎて憤死してしまいそうだったが背に腹は代えられない。
「い、挿れてくださ……宮地さんの、早く欲しい、っす」
絶え間なく与えられるもどかしい刺激に息を上げながら、縋るように見つめて言った。
蚊の鳴くような小さな声にしかならなかったが、それでも宮地は満足そうに笑うと突っ込んだままになっていた指をずるりと引き抜き、高尾の腰を持ち上げて自分の猛ったモノを押しあてた。
「熱いな……火傷しそうだ」
腰を掴んだまま根元まで一気に埋め込まれ、高尾のナカを探る様に腰を揺する。
「んんっ、は……ぁっ、ああっ」
耳たぶや首筋に吸い付き、赤い痕を残しながらリズムよく突き上げられて堪え切れない嬌声が高尾の口から洩れる。
「ハハッ、すっげーの。いつもより感度いいんじゃねぇ? 裕也に見られて興奮してんだろ」
「っ、あっぁあ……ッちがっそんなんじゃ……っ」
「違う? こんなになって……どんどん溢れて来てんぞ」
「や、ソコは……ッ」
突き上げながら無防備に放置された性器に指が絡んだ。先端からとめどなく溢れる蜜を掬い取りわざと音が響くように扱かれて堪らず達してしまいそうになる。
「ホラ、裕也に見せてやれよお前がイクとこ」
「あっ、やめっ、……それは……や、ァアッ」
何とか宮地の指先を止めようとするけれど与えられる快感が強すぎて大した力にはならない。視界に興奮しきった瞳を向ける裕也が飛び込んできて余計に快感が煽られた。
「宮地さ、見んな……ぁあっ、ダメっ宮地さんも、触っちゃ……や、ぁあっ」
どんなに堪えようとしても堪え切れず、ナカを穿つ宮地の性器がイイ所を突いた瞬間、大きく身体をのけ反らせて宮地の手の中で爆ぜた。